The Isley Brothers - Givin' It Back (1971)
The Isley Brothers『Givin' It Back』
The Isley Brothersが1971年9月に自らのインディペンデント・レーベルT-Neckから発表した通算9作目のスタジオ・アルバム。タイトル『Givin' It Back(お返しする)』が示す通り、本作はボブ・ディラン、ニール・ヤング、スティーヴン・スティルス、ジェームス・テイラー、エリック・バードン&ウォーら、同時代の白人フォーク/ロックのヒット曲のみで構成された全編カバー・アルバムである。かつてビートルズをはじめとする白人ロック勢がアイズレーの「Twist and Shout」や「Shout」をカバーして世界的な名声を得たことに対し、今度はアイズレー側がカウンターカルチャーの名曲群をブラック・ソウル/ファンクへと鮮やかに再定義して「お返し」するという、痛快極まるコンセプトから誕生した。
制作背景・エピソード
モータウンを離脱してT-Neckを再始動させたアイズレー・ブラザーズは、大衆迎合的なポップ・ソウルから脱却し、時代の空気をダイレクトに反映した表現を模索していた。その転換点において決定的な役割を果たしたのが、当時19歳だった弟アーニー・アイズレー(Ernie Isley)である。
1960年代初頭に若きジミ・ヘンドリックスがアイズレー家に寄宿し、彼らのバックバンドでギターを弾いていたことは有名な事実である。ジミの演奏を間近で浴びて育ったアーニーは、本作で縦横無尽にファズ・ギターを唸らせ、兄ロナルド・アイズレーの熱狂的なゴスペル・ヴォーカルと真っ向からぶつかり合った。マーヴィン・アイズレー(ベース)やクリス・ジャスパー(キーボード)が本格加入する前の過渡期でありながら、のちの歴史的名盤『3+3』(1973年)へと直結する「ファンク・ロック・スタイル」の骨格がここで完成を見た。
サウンドと聴きどころ
本作の白眉は、冒頭に配された9分超の長尺メドレー「Ohio / Machine Gun」である。ケント州立大学銃撃事件への怒りを歌ったニール・ヤング(CSN&Y)のプロテスト・ソング「Ohio」と、ジミ・ヘンドリックスがベトナム戦争の惨禍をギターで描写した「Machine Gun」を融合。ロナルドの悲痛なシャウトと、銃声を模したアーニーの凶暴なディストーション・ギターが交錯し、ブラック・ロック史に燦然と輝く凄まじい緊迫感を生み出している。
続くジェームス・テイラー「Fire And Rain」では、繊細なフォーク・バラードを情熱的なスロウ・ソウルへと昇華。ロナルドの切なさを極めたファルセットと、重厚なバック・コーラスが胸を締め付ける。そしてボブ・ディランの「Lay Lady Lay」は、なんと10分を超える官能的なスロウ・ジャムへと大変貌を遂げた。甘美なエレクトリック・ピアノとアーニーのメロウなオブリガート、吐息混じりのヴォーカルが織りなす空間は、のちの「クワイエット・ストーム」の先駆ともいえる極上のグルーヴを放つ。
さらにスティーヴン・スティルスの名曲を躍動感あふれるゴスペル・ファンクへと生まれ変わらせた「Love The One You're With」、エリック・バードン&ウォーのラテン・ファンクをさらに泥臭く腰を直撃するビートに仕立て直した「Spill The Wine」など、全編を通じて原曲の良さを損なうことなく完全にアイズレーの血肉へと昇華している。
時代の文脈
1971年は、スライ&ザ・ファミリー・ストーン『There's a Riot Goin' On』やマーヴィン・ゲイ『What's Going On』がリリースされ、ソウル・ミュージックが強い社会的メッセージと深遠な音楽性を獲得した変革の年である。アイズレー・ブラザーズもまた、人種やジャンルの境界線を軽々と越え、ロックとソウルの融合を果敢に推し進めた。
アルバムは米Billboard R&Bアルバム・チャートで5位、総合チャート(Billboard 200)で71位を記録。シングル「Love The One You're With」はR&Bチャート3位(全米総合18位)の大ヒットとなり、「Spill The Wine」(R&B 14位)や「Lay Lady Lay」(R&B 29位)も好調なチャートアクションを見せた。
後世への影響
白人ロック/フォークのコード進行やメロディをブラック・ミュージックのボキャブラリーで再構築する本作の手法は、アイズレー自身のその後の大ヒット路線(トッド・ラングレン「Hello It's Me」やシールズ&クロフツ「Summer Breeze」のカバー)の揺るぎない礎となった。
また、アーニー・アイズレーが本作で見せた攻撃的かつ叙情的なギター・プレイは、黒人ギタリストの新たなヒーロー像を提示し、プリンス(Prince)やレニー・クラヴィッツ(Lenny Kravitz)らに決定的な影響を与えた。ジャンルの垣根を打ち破り、ブラック・ミュージックの無限の受容力と創造性を示した金字塔的アルバムである。
トラックリスト
- A1 Ohio / Machine Gun 9:13
- A2 Fire And Rain 5:29
- A3 Lay Lady Lay 10:22
- B1 Spill The Wine 6:32
- B2 Nothing To Do But Today 3:42
- B3 Cold Bologna 3:03
- B4 Love The One You're With 3:40
動画プレイリスト
このアーティストについて
The Isley Brothersは、アメリカ・オハイオ州シンシナティ出身のR&B/ソウル・グループだ。1950年代前半に活動を始め、ロック、ポップ、ファンク...
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