Roy Ayers - Ubiquity (1970)
Roy Ayers 1970

Roy Ayers - Ubiquity (1970)

Jazz Funk / Soul Jazz-Funk Soul-Jazz

Roy Ayers『Ubiquity』――ジャズからジャズ・ファンクへ踏み出した1970年作

Roy Ayersの『Ubiquity』は、1970年にUSのPolydorから出た作品で、AyersがPolydorへ移って最初に発表したアルバムにあたる。ここで重要なのは、単なる移籍第一弾ではなく、自身のバンド名にもなる「Roy Ayers Ubiquity」を始動させた出発点でもあることだ。Ayersはそれ以前、ビバップ寄りのジャズや、Herbie Mann周辺での活動を経てキャリアを重ねてきたが、この作品ではエレクトリック楽器を前面に出し、後のジャズ・ファンク路線へ明確に舵を切っている。

作品の位置づけ

Roy Ayersはヴィブラフォン奏者として知られるが、本作ではその楽器の響きが中心にありながら、バンド全体の推進力がかなり強い。Ayers自身のヴィブラフォンとボーカルに加え、Harry WhitakerとBill Hendersonのエレクトリック・ピアノ、John Williamsのエレクトリック・ベース、Alphonse Mouzonのドラムス、Jumma Santosのコンガ、Edwin Birdsongのオルガンとボーカルが並ぶ編成で、アレンジはAyersとBirdsongの共同。録音はニューヨークのA & R StudiosとMayfair Studiosで行われた。

制作面ではJUNATのプロダクション、アルバム・スーパーバイザーにEsmond Edwards、エグゼクティブ・プロデューサーにMichael Levy、アソシエイト・プロデューサーにMyrnaleah Williamsがクレジットされている。Atlantic時代の比較的伝統的なジャズから、Polydor期のファンク寄りのサウンドへ移る、その最初の輪郭がここで見える。

収録曲と聴こえ方

収録曲はAyersのオリジナルを軸にしつつ、カヴァーも交えた構成。A1「Pretty Brown Skin」、A3「The Fuzz」などのオリジナルは、ヴィブラフォンの輪郭とリズム隊の粘りが前に出る。A2にはBurt Bacharachの「Raindrops Keep Fallin' On My Head」が入り、同曲の有名なメロディをそのままポップに寄せるのではなく、バンドの色で組み替えている。B4のJoe Zawinul「Painted Desert」も含め、当時のジャズとソウル、ファンクの接点がよく見える選曲だ。

実際に聴くと、派手な展開よりも、各楽器の置き方でグルーヴを作る場面が印象に残る。ヴィブラフォンが前に出る瞬間もあれば、オルガンやエレピが和声を支え、コンガが細かくリズムを押す場面もある。曲によっては男女のボーカルも入り、インスト中心のジャズ作品というより、ソウル寄りの空気を持つセッションとしてまとまっている。

「Ubiquity」という名前

バンド名にもなった「Ubiquity」は、「同時にあらゆる場所に存在する状態」を意味する言葉として知られる。Ayersがこの語感に惹かれて選んだという話も残っている。タイトルの通り、1つのジャンルに収まり切らない動きが作品全体にある。ジャズの演奏感、ソウルの歌心、ファンクの反復が同じ盤面に並び、後のジャズ・ファンクの雛形のような役割を果たしている。

同時代とのつながり

1970年前後のジャズ界では、Miles Davis周辺の電化以後、Herbie HancockやLonnie Liston Smithらも含めて、エレクトリックな音作りが広がっていた。Ayersもその流れの中にいるが、彼の持ち味はヴィブラフォンの響きを残したまま、ファンクのリズムに自然に乗せるところにある。本作はその方向性がはっきり見える初期の記録で、のちの『Everybody Loves The Sunshine』へつながる道筋もここにある。

ヒップホップ以降の文脈でもRoy Ayersは重要な存在になるが、その前提として『Ubiquity』の時点で、すでにサンプリングしやすいリフや、反復で引っ張る曲作りの感覚が備わっている。Ayersが後に「最もサンプリングされるアーティストの一人」として語られる背景には、この時期の作品群がある。

まとめ

『Ubiquity』は、Roy Ayersがジャズの演奏家からジャズ・ファンクの開拓者へ移る瞬間を捉えたアルバムだ。Atlantic時代の延長線ではなく、Polydor期の始まりとして聴くと意味がはっきりする。ヴィブラフォンを中心に据えながら、エレピ、オルガン、ベース、コンガが重なり、ソウル・ジャズとファンクの境目を行き来する構成。1970年という年の空気も含めて、Ayersのその後を考えるうえで外せない一枚になっている。

トラックリスト

  1. A1 Pretty Brown Skin 5:42
  2. A2 Raindrops Keep Fallin' On My Head 4:49
  3. A3 I Can't Help Myself 3:05
  4. A4 Love 4:25
  5. B1 The Fuzz 4:10
  6. B2 Hummin' 3:45
  7. B3 Can You Dig It? 5:54
  8. B4 Painted Desert 4:44

動画プレイリスト

公開: 2026年9月
Share
戻る

あわせて聴きたい "Jazz-Funk"

toast