Roy Ayers Ubiquity - A Tear To A Smile (1975)
Roy Ayers Ubiquity 1975

Roy Ayers Ubiquity - A Tear To A Smile (1975)

Jazz Funk / Soul Jazz-Funk Soul-Jazz

Roy Ayers Ubiquity『A Tear To A Smile』

ジャズ・ヴァイブラフォン奏者/プロデューサーのロイ・エアーズ率いるRoy Ayers Ubiquityが1975年にPolydorから発表した通算8作目のスタジオ・アルバム『A Tear To A Smile』。映画『Coffy』のサントラや『Virgo Red』『Change Up the Groove』といった初期の硬質なジャズ・ファンク路線から、洗練されたメロウ・ソウルやプロト・ディスコへの接近を遂げ、エアーズの代名詞となる極上の浮遊感とアーバンなアンサンブルを結実させた名盤である。

制作背景・エピソード

本作のサウンドの中核を支えているのは、ロイ・エアーズの長年の右腕であり、共作者兼アレンジャーを務めたベーシストのウィリアム・アレン(William Allen)である。リズム隊には、名ドラマーのバーナード・“プリティ”・パーディ(Bernard Purdie)とデニス・デイヴィス(Dennis Davis)が参加し、タイトで粘り気のある極上のポケット・グルーヴを供給した。

さらに特筆すべきは、多彩で豪華なヴォーカリスト陣の参加である。後にグラミー賞ジャズ・シンガーとして頂点を極めるディー・ディー・ブリッジウォーター(Dee Dee Bridgewater)をはじめ、異能のファンク・ミュージシャンであるエドウィン・バードソング(Edwin Birdsong)、キャロリン・バードらが参加し、従来のインストゥルメンタル主体のジャズ・フュージョンから、華やかなヴォーカル・アンサンブルを前面に出したスタイルへと大きく舵を切った。

時代の文脈

1975年当時、ジャズ界ではマイルス・デイヴィスやハービー・ハンコックに牽引される形で電化サウンドとファンク/ディスコへの接近が急速に進んでいた。商業主義に傾倒するあまりオリジナリティを失う作品も少なくないなか、ロイ・エアーズはジャズの洗練されたコード感とアドリブの緊張感を失うことなく、ダンスフロアの高揚感とベッドルームのメロウネスを高度に融合させた。

また、黒人演劇や地域文化との連帯も本作の重要なテーマである。オープニングを飾る「2000 Black」は、ニューヨーク・クイーンズを拠点とする黒人劇団「スペクトラム・シアター」の同名戯曲から着想を得て書かれたナンバーであり、1970年代のアフロ・アメリカンが未来に向けて抱いた希望とプライドが力強く刻まれている。

サウンドと聴きどころ

本作の魅力は、温もりあふれるフェンダー・ローズの響き、ファットなARPシンセサイザーのベースライン、そしてエアーズが奏でるクリスタルなヴァイブラフォンの音色が織りなすシームレスな音響空間にある。

アルバムの幕を開ける「2000 Black」は、パーディの強靭なビートとモーダルなブラス・リフ、力強いコーラスが一体となったハイエナジーなジャズ・ファンク・アンセム。続く「Magic Lady」では、エアーズ節全開の官能的でとろけるようなメロウ・グルーヴが堪能できる。「Time And Space」ではディー・ディー・ブリッジウォーターの澄み渡るファルセットが幻想的な美を描き出し、アース・ウインド&ファイアーの同年の大ヒット曲を取り上げた「The Way Of The World」では、原曲の壮大なソウルをジャジーで洗練されたクロスオーバー・アンセムへと見事に換骨奪胎している。

さらに表題曲「A Tear To A Smile」の哀愁漂う美しい旋律や、浮遊感あふれるヴァイブラフォンが幻想的な夜明けを演出する「Miles (Love's Silent Dawn)」など、アルバム全編を通じて一瞬たりとも緊張感と心地よさが途切れない。

後世への影響

1980年代末以降の英国アシッド・ジャズやレア・グルーヴ・シーンにおいて、本作は「全曲がハイライト(捨て曲なし)」の名盤として熱狂的な支持を集めた。特に「2000 Black」は、英ブロークンビーツのパイオニアである4heroのディーゴ(Dego)が自身のレーベル/プロジェクト名「2000Black」の由来とするなど、クラブ・カルチャーにおける不滅のアイコンとなった。

またヒップホップ・シーンにおいても重要なインスピレーション源となり、「Show Us A Feeling」がピート・ロック(Pete Rock feat. Method Man「Half Man Half Amazin'」)にサンプリングされたほか、MC Renや西海岸のアンダーグラウンド勢にサンプリングされるなど、現代のネオ・ソウルやビート・ミュージックの根底を支える遺伝子として愛され続けている。

トラックリスト

  1. A1 2000 Black 5:25
  2. A2 Magic Lady 3:17
  3. A3 Show Us A Feeling 3:05
  4. A4 Ebony Blaze 3:57
  5. A5 Time And Space 4:06
  6. B1 No Question 4:29
  7. B2 The Way Of The World 3:30
  8. B3 The Old One Two (Move To Groove) 4:31
  9. B4 Miles (Love's Silent Dawn) 2:28
  10. B5 A Tear To A Smile 5:18

動画プレイリスト

公開: 2026年10月

このアーティストについて

Roy Ayers Ubiquity

Roy Ayers Ubiquity

Roy Ayers Ubiquityは、1970年代初頭にロイ・エアーズが立ち上げた自身のバンドだ。バンド名の「Ubiquity」は、「同時にあらゆる場所に存在する状態」...

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