Sangiuliano - Take Off (1978)
Sangiuliano 1978

Sangiuliano - Take Off (1978)

Electronic Rock Prog Rock

Antonio Sangiuliano『Take Off』について

Antonio Sangiulianoの『Take Off』は、1978年にイタリアRCAから登場した唯一のオリジナル・アルバムとして知られている作品だ。今回取り上げるのは1987年に日本で出たRCA盤で、オリジナルから約10年後の再発にあたる。作品の中心にはSangiuliano本人によるキーボード・ワークがあり、ドラムと一部のソプラノ・ボーカルが加わる構成。全3曲、約32分という短い尺の中に、電子音楽とプログレッシブ・ロックの要素がまとまっている。

作品の位置づけ

Sangiulianoはトスカーナ出身の作曲家で、この『Take Off』が正式なアルバムとしては唯一のものとされている。イタリアの70年代プログレというと、バンド編成での長尺曲や、歌もののドラマ性がまず思い浮かぶが、この作品はその流れの中でもかなり個人色の強い作りになっている。実際、アンサンブルの主役はほぼキーボードで、オルガンやシンセサイザーの処理が曲の輪郭を決めている。

同時代のイタリア作品の中では、ロック・バンドの熱量よりも、電子音楽寄りの設計が目立つ。レビューでもTangerine Dreamを思わせるという指摘が見られるように、反復するフレーズや音色の重ね方に、ドイツ系クラウト・ロックやシンセ・プログレとの共通点がある。とはいえ、単に無機質な電子音楽に寄るわけではなく、旋律の運びにはイタリアらしい歌心が残っている。

収録内容と聴きどころ

収録は3曲のみで、冒頭の「Time Control」が16分超の大曲として配置されている。この曲がアルバムの軸で、展開の大きさと音色の切り替えが印象に残る。長尺ではあるが、単調に引き延ばすのではなく、キーボードのレイヤーを変えながら進むため、曲の中で場面が入れ替わる感覚がある。

タイトル曲「Take Off」は、オーケストラ的に広がるキーボード処理が特徴的なナンバーとして語られることが多い。電子音の粒立ちだけでなく、フレーズの積み重ね方に厚みがあり、アルバム全体の中でも構成の巧さが見えやすい。短い中に要素を詰め込んだ作りで、アルバムの中核を支える曲になっている。

全体としては、派手な歌唱や分かりやすいフックで押す作品ではない。むしろ、音色の変化、リズムの置き方、曲の区切り方で聴かせるタイプの記録といえる。実際に聴くと、キーボードの主導権が最後まで揺らがず、演奏の設計そのものを楽しむ感触が強い。

当時から後年への流れ

『Take Off』は当時の大きなヒット作として知られるものではなく、後年になってプログレや電子音楽の文脈で見直された作品に近い。こうした再評価は、70年代イタリアのカタログを掘る流れの中でよく見られるが、このアルバムもその一つに数えられる。バンドの派手な個性より、作曲家本人の音の組み立てが前面に出ている点が、現在の耳ではむしろ特徴として受け取られやすい。

また、Sangiulianoは後に映画音楽にも関わったとされており、このアルバムにも映像的な場面転換を思わせる部分がある。長い1曲の中で空気が切り替わる感じや、音の密度を調整しながら進める構成は、単なるロック・アルバムというより、作曲家の作品集としての性格も感じさせる。

1987年日本盤について

今回の1987年日本盤は、オリジナルの1978年盤から時間を置いて出た再発盤だ。こうした再発では、オリジナル盤の時代感をそのまま残しつつ、別の市場で流通する形になっているのが特徴になる。日本でのリリースは、当時の国内リスナーにとっては入手の機会を広げる役割を持っていたはずで、イタリア盤とはまた違った流通のされ方をしていたことがうかがえる。

レーベルはRCA。1970年代から80年代にかけて、RCAは各国で多くのロックやポップスを扱っていたが、この盤もそのカタログの中に置かれている。日本盤としての存在は、作品自体が国境を越えて拾われていたことの証拠でもある。

まとめ

Antonio Sangiuliano『Take Off』は、イタリア・プログレの中でもかなり個人作の色が濃いアルバムだ。キーボード主体の構成、3曲のみの簡潔な設計、電子音楽寄りの音像、そして長尺曲「Time Control」を中心にした組み立てが、この作品の輪郭をはっきりさせている。70年代イタリアのロックを追っていくと、こうしたバンド作品とは少し違う立ち位置のアルバムに出会うことがあるが、本作もその一枚として記憶される内容だろう。

トラックリスト

  1. A1 Time Control 16:19
  2. B1 Saffo's Gardens 7:27
  3. B2 Take Off 8:40

動画

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