Sharon Jones And The Dap-Kings - Naturally (2005)
Sharon Jones And The Dap-Kings『Naturally』(2005)
21世紀におけるディープ・ファンク/レトロ・ソウル・リバイバルの記念碑的傑作。Sharon Jones And The Dap-Kingsが2005年にDaptone Recordsから放ったセカンド・アルバム(カタログ番号DAP-004)である。ニューヨーク・ブルックリンのブッシュウィックに構えたダプトーンの専用スタジオ、通称「House of Soul」にて録音・ミックスされた。主宰者であるガブリエル・ロス(Gabriel Roth、別名ボスコ・マン/Bosco Mann)がプロデュースおよびベースを担当。ホーマー・スタインワイス、ビンキー・グリップタイト、トミー・ブレネック、デイヴ・ガイ、ニール・シュガーマンら凄腕ミュージシャンたちが集結し、ヴィンテージ・ソウルの真髄を余すところなく捉えている。
制作背景・エピソード
本作はデジタル機器を一切排除し、ヴィンテージのアナログ8トラック・テープ・レコーダーを用いて、バンド全員が同じ部屋で呼吸を合わせて一発録音するオールドスクールな手法で制作された。プラグインやピッチ補正に頼らない生々しいテープ・コンプレッションと部屋鳴り(ルーム・アンビエンス)が、黄金期のソウル盤と寸分違わぬ骨太な音像を生み出している。
フロントウーマンのシャロン・ジョーンズは、ジェームス・ブラウンと同じジョージア州オーガスタ出身。教会のゴスペルで歌唱力を磨きながらも、大手レコード会社からは「黒人女性シンガーにしては歳を取りすぎている、ルックスがコマーシャルではない」と拒絶され、ニューヨークのライカーズ島刑務所で看守として勤務するなど苦節の日々を送っていた。40代半ばを過ぎてダプトーン創設陣と巡り合い、遅咲きにして本格的なキャリアをスタートさせた彼女の歌声には、長い人生の酸いも甘いも噛み分けた本物のソウルが宿っている。
サウンドと聴きどころ
アルバムの幕を開ける「How Do I Let A Good Man Down?」から、バンドの圧倒的な推進力とシャロンの豪快なシャウトが炸裂する。ホーマー・スタインワイスによるタイトなドラム・ブレイクと、鋭いホーン・セクションのユニゾンは、全盛期のジェームス・ブラウン&JBズ直系のヘヴィ・ファンクそのものである。
本作の白眉といえるのが、ウディ・ガスリー(Woody Guthrie)の歴史的プロテスト・ソングをディープ・ファンクへと昇華させた「This Land Is Your Land」である。多くのポップ・カバーでは省略されてきた「私有地への立ち入り禁止看板」や「救済の配給に並ぶ飢えた人々」といった急進的な歌詞を堂々と復活させ、痛烈な社会批判と連帯のメッセージをファンキーなビートに乗せて熱唱する姿は圧巻の一言に尽きる。
さらに、同郷の伝説的ソウルマンであるリー・フィールズ(Lee Fields)を迎えたデュエット「Stranded In Your Love」では、スタックスやアトランティックの男女デュエットを彷彿とさせる濃密な掛け合いを展開。哀愁漂う珠玉のスロウ・バラード「How Long Do I Have To Wait For You?」における切なくも力強いヴォーカル表現や、「Fish In The Dish」のユーモラスなグルーヴなど、アルバム全編にわたって一切の妥協がない。
時代の文脈
2000年代初頭のポピュラー音楽界は、プロ・ツールスによるデジタル・レコーディングや打ち込み主体のR&B/ヒップホップがチャートを完全に支配していた。そのアンチテーゼとして、1960年代後半から70年代初頭のスタックス、モータウン、JB's、Hiレコードの土臭くオーセンティックな音像を頑なに追求した本作は、アンダーグラウンドのレコード・ディガーやクラブDJから熱狂的な支持を獲得した。
インディー・レーベルからのリリースでありながら、ピッチフォーク(Pitchfork)、モジョ(Mojo)、アンカット(Uncut)など主要音楽メディアから絶賛を浴び、シャロン・ジョーンズ&ザ・ダップ・キングスは世界各国の主要フェスティバルへと招聘される看板アクトへと駆け上がった。
後世への影響
本作の歴史的重要性を決定づけたのが、英プロデューサーのマーク・ロンソン(Mark Ronson)との邂逅である。本作の生々しいアナログ・サウンドに強い衝撃を受けたロンソンは、エイミー・ワインハウス(Amy Winehouse)の歴史的名盤『Back to Black』(2006年)の制作にあたり、ダップ・キングスをそのままバッキング・バンドとして起用した。「Rehab」や「You Know I'm No Good」の世界的メガヒットを支えたのは、紛れもなく本作で完成されたダップ・キングスのグルーヴである。
本作と『Back to Black』の世界的成功を契機として、アデル(Adele)、チャールズ・ブラッドリー(Charles Bradley)、リオン・ブリッジズ(Leon Bridges)へと続く2000年代後半以降のヴィンテージ・ソウル/R&Bリバイバルが花開いた。2016年に惜しまれつつ世を去ったシャロン・ジョーンズの魂と、ダプトーン・サウンドの原点が刻まれた21世紀ソウルの最高傑作である。
トラックリスト
- A1 How Do I Let A Good Man Down? 3:02
- A2 Natural Born Lover 3:04
- A3 Stranded In Your Love 5:47
- A4 My Man Is A Mean Man 3:16
- A5 You're Gonna Get It 4:59
- B1 How Long Do I Have To Wait For You? 4:03
- B2 This Land Is Your Land 4:31
- B3 Your Thing Is A Drag 3:33
- B4 Fish In The Dish 3:18
- B5 All Over Again 4:43