Terence Trent D'Arby - Introducing The Hardline According To Terence Trent D'Arby (1987)
Terence Trent D'Arby 1987

Terence Trent D'Arby - Introducing The Hardline According To Terence Trent D'Arby (1987)

Funk / Soul Funk Soul Contemporary R&B

Terence Trent D'Arby / Introducing The Hardline According To Terence Trent D'Arby

Terence Trent D’Arbyのデビュー・アルバム。1987年、CBSからヨーロッパ盤として登場した作品で、のちにSananda Maitreyaとして知られることになる本人が、Terence Trent D’Arby名義で一気に存在感を示した1枚だ。シングルの成績、アルバム・チャートの上昇、そして本人の強いキャラクターまで含めて、80年代後半のソウル/R&Bの空気を語るうえで外せないタイトルになっている。

デビュー作としての位置づけ

このアルバムは、1987年7月13日にCD、LP、カセットで発売されたデビュー作。英国では初登場1位を記録し、通算9週にわたって1位を維持した。CBS UKにとっても、デビュー作として非常に速いセールスを記録した作品として知られている。アメリカでもヒットし、Billboard 200で4位、R&Bアルバム・チャートで1位、さらにプラチナ認定を獲得した。

Terence Trent D’Arby本人は、もともとボクシングに打ち込み、その後に音楽へ進んだ経歴の持ち主。フロリダでのボクシング経験、米陸軍への入隊、西ドイツ駐留中にバンド活動をしていた経緯があり、ロンドン移住後にCBSと契約して本作へつながる。デビュー時点から、単なる新人シンガーではなく、経歴そのものが強い個性として受け取られていた。

収録曲とヒット曲

アルバムの核になるのは、やはりシングル曲だ。英国では「If You Let Me Stay」が7位、「Wishing Well」が4位、「Dance Little Sister」が20位、「Sign Your Name」が2位を記録している。特に「Wishing Well」は米国でも大きなヒットになり、1988年にBillboard Hot 100で1位を獲得した。「Sign Your Name」も米国で4位まで上がっており、この2曲だけでもアルバムの存在感はかなり大きい。

曲作りの面では、ほぼ全編を本人が書き、アレンジしているのが大きい。スモーキー・ロビンソン作の「Who’s Loving You」を除き、ほとんどがTerence Trent D’Arbyの作詞作曲。さらに「Wishing Well」はSean Oliverとの共作になっている。ソングライターとしての輪郭がはっきりした作品で、デビュー作でありながら“歌う人”以上の印象を残す構成だ。

サウンドの印象

サウンドは、ソウルを軸にしながらファンク、当時のコンテンポラリーR&Bの要素をきっちり押さえている。ベースの動き、ブラスの入り方、コーラスの積み方が丁寧で、80年代後半らしい整った録音の中に、歌の熱量がしっかり残る。プロデュースはマーティン・“テディベア”・ウェアと本人が中心で、「If You Let Me Stay」と「Seven More Days」はハワード・グレイが担当している。

実際に通して聴くと、ヒット曲だけが前に出るタイプではなく、アルバム全体で歌の押し引きがある。ファルセット寄りの表現から、強い声の押し出しまで振れ幅があり、曲ごとに声の置き方が変わる。バラード寄りの楽曲でも、ただ滑らかに流すだけでなく、フレーズの頭を少し強く置く場面が多い。そこがこの人の持ち味として残る。

制作とクレジットの細部

オリジナル盤のクレジットには、制作に関わった人物やバッキング・ヴォーカルの記載が細かく入っている。Side Bのラベルやインナー・スリーブには、ユーモアを交えた文言もあり、当時の本人のキャラクターがそのままパッケージに反映されている。録音はCBS Recordsによるもので、ジャケットはオランダ製。ヨーロッパ盤らしく、流通とプレスの情報が明確なのもこの時代のCBS作品らしいところだ。

この盤は、Haarlemプレスの“UK local” CBS盤として扱われる個体があり、ランアウトの表記やマトリクス違いもいくつか確認されている。さらに後年、クラブ盤のステッカーが追加されたものも存在する。つまり、同じ1987年盤でも製造後の差異がある。コレクター目線では、そこも見どころのひとつになる。

同時代の文脈

この作品が出た時期のソウル/R&Bは、プリンスやマーヴィン・ゲイ以降の流れ、そして80年代の洗練されたポップ・ソウルが同居していた。Terence Trent D’Arbyは、その中で黒人音楽の伝統を強く意識しながら、ロック寄りの強い歌唱も持ち込んだ人物として見られていた。英国で大きく受け入れられたのも、当時のUKポップ・シーンがこうした越境的なソウル・シンガーを受け止める土壌を持っていたからだろう。

のちに本人はSananda Maitreyaへ改名し、このデビュー作も現在の配信では別名義で扱われることがあるが、1987年当時のこのアルバムは、Terence Trent D’Arbyという名前が強く刻まれた出発点だ。ヒット曲の並びだけでなく、作曲、編曲、歌唱、そして本人の存在感まで含めて、デビュー作としての密度が高い1枚。

トラックリスト

  1. This Side
  2. A1 If You All Get To Heaven 5:17
  3. A2 If You Let Me Stay 3:13
  4. A3 Wishing Well 3:29
  5. A4 I'll Never Turn My Back On You (Father's Words) 3:36
  6. A5 Dance Little Sister 3:53
  7. A6 Seven More Days 4:33
  8. That Side
  9. B1 Let's Go Forward 5:31
  10. B2 Rain 2:58
  11. B3 Sign Your Name 4:35
  12. B4 As Yet Untitled 5:33
  13. B5 Who's Loving You 4:33

動画プレイリスト

公開: 2026年9月
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