Earth, Wind & Fire - Last Days And Time (1972)
Earth, Wind & Fire 1972

Earth, Wind & Fire - Last Days And Time (1972)

Rock Jazz Funk / Soul Funk Soul

Earth, Wind & Fire『Last Days And Time』──初期EW&Fの輪郭がくっきり見える1972年作

『Last Days And Time』は、Earth, Wind & Fireが1972年にColumbiaから発表した3作目のスタジオ・アルバムである。のちに大編成のホーン・アレンジや洗練されたコーラスで知られるバンドだが、この時点ではまだサウンドの重心がかなり違う。ファンクを軸にしつつ、ジャズ、ロック、ソウルの要素が混ざり合い、後年の“強く整ったEW&F”とは別の、もう少し生々しいバンド感が前に出ている作品だ。

アメリカ盤のオリジナルはColumbiaのKC 31702。ゲートフォールド仕様で、Columbia Recordsのプロモーション用ニュースレター兼インナー・スリーブ「The Inner Sleeve」も付属している。フロントのシュリンクには青いステッカーが貼られ、「Featuring Their Exciting Hits “MOM” - “POWER” and “WHERE HAVE ALL THE FLOWERS GONE”」と記されている。発売当時の訴求ポイントがそのまま残る、いかにも70年代前半のLPらしい仕様である。

作品の位置づけ

Earth, Wind & Fireは1970年にシカゴで結成されたバンドで、モーリス・ホワイトを中心に始動した。『Last Days And Time』の時点では、まだ後年の黄金期を支えるメンバー構成が完全に固まる前で、アルバムにはモーリス・ホワイト、ヴァーダイン・ホワイト、フィリップ・ベイリー、ジェシカ・クリーヴス、ローランド・バウティスタ、ラリー・ダン、ロニー・ローズ、ラルフ・ジョンソンらが参加している。初期EW&Fを語るうえで、この盤はかなり重要な位置にある。

1970年代前半のソウル/ファンク周辺では、Sly & The Family StoneやThe Isley Brothers、The Temptationsのサイケデリック寄りの展開など、バンド編成を前面に出した作品が増えていた。その流れの中で、Earth, Wind & Fireは単なるファンク・バンドではなく、ジャズ寄りのコード感や演奏の密度を持ち込んでいく。本作にもその方向性がはっきり見える。

収録曲とシングル

収録は全8曲。中でも「Mom」は1972年11月にシングル・カットされ、CashboxのR&Bチャートで39位を記録した。B面は「Power」。この2曲はアルバムの中でも比較的存在感があり、当時のバンドが持っていたソウル色と演奏の推進力をよく示している。

もうひとつ目立つのが、ブレッドの「Make It with You」と、ピート・シーガーの「Where Have All the Flowers Gone?」のカバーである。EW&Fは後年もカバーを自分たちの語法に引き寄せるのがうまいが、この時点でもすでにその手つきがある。原曲の輪郭を残しながら、バンドのリズム感とコーラスで別の温度に置き換える作業が自然に行われている。

録音と制作

録音は1972年4月、ハリウッドのSunset Sound Studiosで行われた。プロデュースはジョー・ウィサート、エンジニアはケント・ネバーガルとアル・シュミット、アルバム・デザインはマティ・クラーヴァインが担当している。Sunset Soundは当時からロック、ソウル、ポップの重要作が多く録られたスタジオで、この盤にもその時代の空気が反映されている。

音の印象としては、低音の押し出しが強く、ドラムとベースの絡みがはっきりしている。ホーンの華やかさが全面に出る後年作と比べると、ここではリズム隊の骨格がそのままアルバムの芯になっている。フィリップ・ベイリーの高い声がすでに存在感を持っている一方で、全体としてはまだ“完成された祝祭感”よりも、“バンドが形を変えながら前へ進んでいる感じ”が強い。実際に聴くと、その移行期らしい揺れがよく分かる。

チャートと反応

アルバムはBillboardのTop Soul Albumsで15位、Billboard 200で87位を記録した。英国のBlues & Soul誌のトップ・ブリティッシュ・ソウル・アルバム・チャートでは9位に入っている。商業的には大ヒット作というより、バンドの基盤を広げた作品として受け止められた形である。

批評面では、後年AllMusicのウィリアム・ルールマンが「それまでのほぼすべてを吸収し、自分たちの軌道に引き込んだ」と評している。初期EW&Fの特徴は、引用元が見えやすいのに、最終的には自分たちの音としてまとまる点にある。この盤はその性格をよく示す。

のちの評価と影響

このアルバムは、後のEW&Fを知っていると少し意外に感じるかもしれない。だが、モーリス・ホワイトのバンド・ビジョンが、ソウル、ファンク、ジャズ、ロックをひとつに束ねる方向へ向かっていたことは、この時点でかなり明確である。後年の大編成サウンドへ進む前段階として聴くと、曲の組み立てや演奏の余白にその後の発展の芽が見える。

また、プロデューサーのジミー・ジャムがこのアルバムを聴いてEW&Fのファンになったとされる話や、ナズがジャケット・アートから着想を得たと語ったエピソードも残っている。音楽面だけでなく、ビジュアルやプロダクションの面でも、後続世代に届いた要素がある作品である。

オリジナル盤について

今回の盤は1972年のUSオリジナル。ColumbiaのKCナンバー時代のリリースで、ラベルやジャケットの仕様にも当時のColumbia盤らしさがある。のちの再発盤と比べると、発売当時の宣伝要素がそのまま封入されている点が特徴で、シュリンクのステッカーやインナー・スリーブも含めて、70年代初頭のLPパッケージをそのまま残している。

『Last Days And Time』は、EW&Fの代表作群の中では少し前の段階にあるが、だからこそバンドの変化が見えやすい。完成形の前にある、試行錯誤と勢いの同居。そこにこのアルバムの面白さがある。

トラックリスト

  1. A1 Time Is On Your Side 3:40
  2. A2 They Don't See 3:53
  3. A3 Make It With You 3:27
  4. A4 Power 7:16
  5. B1 Remember The Children 4:01
  6. B2 Where Have All The Flowers Gone 5:42
  7. B3 I'd Rather Have You 4:39
  8. B4 Mom 5:50

動画プレイリスト

公開: 2026年9月
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