Leroy Hutson - The Man! (1974)
Leroy Hutson『The Man!』(1974)について
リロイ・ハトソンが1974年にCurtomから発表したセカンド・ソロ・アルバムが『The Man!』。前作『Love Oh Love』で示した、ストリングスやホーンを組み込んだシカゴ産ソウルの流れをそのまま受けつぎつつ、本人の作曲、歌唱、演奏、プロデュースを軸にまとめた一枚だ。Curtom Studiosで録音され、シカゴの空気を濃く残した作品として扱われている。
リロイ・ハトソンという人物
ハトソンは1945年6月4日、ニュージャージー州ニューアーク生まれ。ハワード大学時代にドニー・ハサウェイと出会い、共作した「The Ghetto」は1970年にハサウェイのヒット曲になった。その後、1971年にはカーティス・メイフィールドの後任としてインプレッションズのリード・シンガーを務め、約2年半在籍。1973年にソロへ移ってからもCurtomに残り、本作はその初期ソロ期を代表するタイトルとして置かれている。
この経歴だけでも、ハトソンが単なる歌い手ではなく、作曲、編曲感覚、バンド運用まで含めて動ける人物だったことが見えてくる。『The Man!』でもその性格ははっきりしていて、歌だけを前面に出すというより、曲全体の設計を自分で握って進める作りになっている。
収録曲とアルバムの流れ
全8曲の構成で、冒頭の「Can't Say Enough About Mom」から「Gotta Move - Gotta Groove」「Ella Weez」「Give This Love A Try」と続く。中盤には「The Ghetto '74」が入り、これはハトソンとドニー・ハサウェイの共作「The Ghetto」を本人が歌い直したヴァージョン。オリジナル曲を自分の名義で再構成した形で、ハトソンのキャリアをつなぐ一曲になっている。
「Ella Weez」はシングルとして切られ、USのR&Bチャートで81位を記録した。アルバム自体もUS R&Bアルバム・チャートで36位に入っている。大きなヒットを連発するタイプの作品ではないが、当時のソウル・アルバムとしては一定の反応を得ていたことが分かる。
演奏面と録音の印象
参加メンバーには、ギターのフィル・アップチャーチ、ドラムのクイントン・ジョセフ、ベースのジョセフ“ラッキー”スコット、サックスのジェリー・ウィルソン、パーカッションのフレッド・ウォーカーが名を連ねる。バック・ヴォーカルにはジャニス・ハトソンとザ・ナチュラル・フォーも加わっている。シカゴのソウルらしい、細かく整理されたアレンジと、ホーンやストリングスの配置が前提にある編成だ。
実際に耳を通すと、歌の熱量を押し出すだけでなく、リズムの置き方や和音の運びで曲を進める場面が多い。派手な展開で引っ張るより、フレーズの重なりやコーラスの積み方で密度を作るタイプのアルバムで、Curtom周辺の作品に共通する、きっちり組まれたソウルの感触が強い。
同時代の文脈
1974年のCurtomは、カーティス・メイフィールドの周辺にあったシカゴ・ソウルの延長線上にあり、政治性の強い作品から、より洗練された都会的ソウルまで幅があった。ハトソンはその中で、メイフィールド直系のメロディ感覚を引き継ぎながら、より柔らかい歌唱と整ったプロダクションで独自の位置を作っている。スティーヴィー・ワンダーのような多機能型ソウル・アーティストと比較されることもあるが、ここではファンクの鋭さより、アレンジの精密さと滑らかな進行が前に出る。
一方で、本作は評価が分かれた作品でもある。楽曲の完成度やアレンジの練り込みを取るか、強い決定打を取るかで見え方が変わるアルバムで、ハトソンの職人的な作り込みがそのまま表に出ている。『The Man!』は、初期ソロ期のハトソンがどんな方向へ進もうとしていたかを、そのまま記録した一枚として捉えやすい。
盤としての情報
US盤、CurtomのCRS-8020。ラベルにはバリエーションがあり、この盤はSonic pressingとされている。録音はCurtom Studios、シカゴ。1974年のオリジナル盤として流通したタイトルで、ハトソンのソロ化後の立ち位置を確認するうえでも重要な作品になっている。
トラックリスト
- A1 Can't Say Enough About Mom 6:17
- A2 Gotta Move - Gotta Groove 3:37
- A3 Ella Weez 2:59
- A4 Give This Love A Try 3:34
- B1 The Ghetto '74 4:32
- B2 After The Fight 3:15
- B3 Could This Be Love 3:06
- B4 Dudley Do-Right 3:44