Graham Central Station - Ain't No 'Bout-A-Doubt It (1975)
Graham Central Station 1975

Graham Central Station - Ain't No 'Bout-A-Doubt It (1975)

Funk / Soul Funk

Graham Central Station『Ain't No 'Bout-A-Doubt It』

スライ&ザ・ファミリー・ストーンのベーシストとしてポピュラー音楽にスラップ奏法(チョッパー・ベース)を持ち込み、ベースの概念を根本から変革したラリー・グラハム(Larry Graham)。彼が率いるグラハム・セントラル・ステーションが1975年7月に発表した通算3作目のスタジオ・アルバムである。サンフランシスコの名門スタジオ「ウォーリー・ハイダー(Wally Heider Studios)」で録音され、ラリー自らが考案した「Thumpin' and Pluckin'(親指で叩き、人差し指で弾く)」奏法を限界まで研ぎ澄ませた、70年代ベイエリア・ファンクの最高峰に君臨する金字塔である。

制作背景・エピソード

ラリー・グラハムはスライ&ザ・ファミリー・ストーンを脱退後、新世代のバンド「ホット・チョコレート(のちにグラハム・セントラル・ステーションへ改名)」を結成。本作の制作時には、ハーシャル・ケネディ(クラヴィネット)、ロバート・サム(オルガン)、デヴィッド・ヴェガ(ギター)、ウィリー・スパークス(ドラム)、パトリース・バンクス(パーカッション、“Funk Box”)という鉄壁のラインナップが揃い、アンサンブルの成熟度は頂点に達していた。

バンド名の「グラハム・セントラル・ステーション」がニューヨークのグランド・セントラル駅に引っかけたユーモアであるように、彼らの音楽は圧倒的な演奏技術に裏打ちされながらも、常にストリートの祝祭感とゴスペル直系の前向きなエネルギーに満ちあふれていた。その熱狂がスタジオで見事にパッケージングされている。

サウンドと聴きどころ

アルバムのオープニングを飾る8分12秒の「The Jam」は、ベース・プレイヤーのみならず全ファンク・ファンにとっての聖典である。ラリーの穏やかな語りから一転、「I can thump! And I can pluck!」という威風堂々たる宣言とともに炸裂するスラップ・ソロは、地鳴りのような重低音と金属的なアタック音で聴き手を圧倒する。パトリース・バンクスの叩く電子リズムボックス“Funk Box”とウィリー・スパークスの生ドラムが織りなす乾いたブレイクビーツ、そしてバンド全員が一体となって繰り出す怒涛のコール&レスポンスは圧巻の一言である。

一方、続く「Your Love」では一転して極上のメロウ・ソウルを披露。ラリーの甘く艶やかなバリトン・ヴォイスとファルセットが交錯し、ゴスペル仕込みの重厚なコーラスが包み込む珠玉のバラードであり、バンドの卓越したメロディ・センスを証明している。

さらにアン・ピーブルズのメンフィス・ソウル名曲を重戦車のようなヘヴィ・ファンクへと解体・再構築した「I Can't Stand The Rain」、底抜けに明るいベイエリア・パーティ・ファンク「It's Alright」や「It Ain't Nothing But A Warner Bros. Party」など、重厚なグルーヴと親しみやすいフックが見事に同居している。

時代の文脈

1975年は、パーラメント/ファンカデリック、アース・ウインド&ファイアー、オハイオ・プレイヤーズらがチャートを席巻し、ファンク・ミュージックがアメリカ音楽の最前線に君臨していた黄金期である。グラハム・セントラル・ステーションは、ブラック・リスナーのみならずロック・ファンをも巻き込むダイナミックなクロスオーバー・パワーを発揮した。

本作は米Billboardソウル・アルバム・チャートで4位、総合アルバム・チャート(Billboard 200)で22位を記録し、全米レコード協会(RIAA)よりゴールド・ディスクを獲得。シングル・カットされた「Your Love」は全米ソウル・シングル・チャートで見事1位(Hot 100でも38位)に輝き、「It's Alright」もソウル・チャート9位をマークするなど、バンド史上最大の商業的成功を収めた。

後世への影響

ラリー・グラハムが本作で完成させたスラップ・ベースの語彙は、ブーツィー・コリンズ、マーカス・ミラー、ルイ・ジョンソン(ブラザーズ・ジョンソン)、さらにはレッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリー(Flea)に至るまで、後世のすべてのベーシストに決定的な影響を与えた。

また、「The Jam」のイントロやブレイクビーツはヒップホップ黎明期から格好のサンプリング・ソースとなり、ビースティ・ボーイズ「Hey Ladies」をはじめ、2PacやEPMDなど数々の名曲に引用された。プリンス(Prince)がラリー・グラハムを「ファンクの師」と仰ぎ、晩年のライブやレコーディングで共演を重ねたことでも知られる通り、現代のブラック・ミュージックの礎となった不朽の名盤である。

トラックリスト

  1. A1 The Jam 8:12
  2. A2 Your Love 3:18
  3. A3 It's Alright 3:46
  4. A4 I Can't Stand The Rain 6:09
  5. B1 It Ain't Nothing But A Warner Bros. Party 6:03
  6. B2 Ole Smokey 3:15
  7. B3 Easy Rider 2:56
  8. B4 Water 4:26
  9. B5 Luckiest People 3:45

動画プレイリスト

公開: 2026年10月

このアーティストについて

Graham Central Station

Graham Central Station

Graham Central Station(グラハム・セントラル・ステーション)は、1973年にカリフォルニア州オークランドで結成されたファンク・バンドだ。バンド名...

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