Loose Ends - A Little Spice (1984)
Loose Ends『A Little Spice』
ロンドンで結成された男女3人組ソウル/R&Bグループ、Loose Endsが1984年にVirgin Recordsから発表した記念すべきデビュー・アルバム。メンバーはジェーン・ユージン(Jane Eugene)、カール・マッキントッシュ(Carl McIntosh)、スティーヴ・ニコル(Steve Nichol)の3人。制作陣にはフィラデルフィアを拠点に活躍していた敏腕プロデューサーのニック・マルティネッリ(Nick Martinelli)を迎え、フィリー・ソウルの名門シグマ・サウンド・スタジオなどで録音・ミックスを敢行した。英国のグループが本場アメリカのアーバン・ソウル/ダンス・ミュージックに真っ向から挑み、独自の洗練されたスタイルを確立した金字塔的作品である。
制作背景と参加メンバー
本場アメリカの本格的なソウル/ファンク・サウンドを渇望していたグループは、ニック・マルティネッリとの強力なタッグにより、フィリー・ソウル直系の豊かなメロウネスとロンドンのストリート感覚を融合させた。カール・マッキントッシュの弾力あるベースとしなやかなボーカル、ジェーン・ユージンのクールで艶やかなリード・ボーカル、そしてスティーヴ・ニコルの洗練されたジャジーな鍵盤ワークが三位一体となり、Loose Endsの揺るぎないアイデンティティが本作で完成した。
本作からは「Tell Me What You Want」「Choose Me」「Dial 999」がシングルカットされ、英国内のみならず各国のダンス・フロアで熱烈な支持を獲得。後にリリースされたUS/カナダ盤では曲順が再編され、大ヒット曲「Hangin' On A String」が追加収録されたことでも知られる。
時代の文脈
1980年代前半の英国では、従来のブリット・ファンク・ムーブメントから、より洗練された80sアーバン・コンテンポラリーやブラコンへとサウンドが進化しつつあった。Loose Endsは、英国出身のアクトでありながら本場アメリカの第一線プロデューサーと本格的にタッグを組み、米国のブラック・ミュージック市場に正面から斬り込んでいった先駆者である。彼らの成功は、その後のグラウンド・ビートやソウル・II・ソウル、シャーデーらに連なる「UKソウル」の世界的隆盛の道を切り拓く重要な転換点となった。
サウンドと聴きどころ
ニック・マルティネッリ特有の、空間を贅沢に活かしたタイトなドラム・プログラミングと、太くうねるシンセ・ベースが生み出す引き締まったグルーヴが全編を貫く。エレクトリックなビートとシンセサイザーの緊張感が疾走する「Dial 999」や、モダン・ブギーの快作「Tell Me What You Want」、そしてタイトル曲「A Little Spice」における極上のクワイエット・ストーム/メロウ・ミディアムまで、都会的でスモーキーな気品に満ちたトラックが揃っている。
後世への影響
本作で確立されたニック・マルティネッリとの制作ラインは、翌1985年の名曲「Hangin' On A String (Contemplating)」における「英国バンドとして史上初となる全米Billboard R&Bシングルチャート第1位獲得」という歴史的快挙へと直結した。本作『A Little Spice』は、その偉業の礎となっただけでなく、後の90年代R&Bやネオ・ソウル、ヒップホップ世代のクリエイターたちにとっても重要な参照点であり続けている。
トラックリスト
- A1 Tell Me What You Want 4:47
- A2 Feel So Right Now 5:24
- A3 Let's Rock 4:57
- A4 So Much Love 4:31
- B1 Dial 999 4:52
- B2 Music Takes Me Higher 4:56
- B3 Choose Me 4:34
- B4 A Little Spice 5:08