Stevie Wonder - Talking Book (1972)
Stevie Wonder 1972

Stevie Wonder - Talking Book (1972)

Funk / Soul Funk Soul

Stevie Wonder『Talking Book』

スティーヴィー・ワンダー(Stevie Wonder)が1972年にTamlaから発表した『Talking Book』は、ポピュラー音楽史の頂点に君臨する不朽の金字塔アルバムだ。21歳を迎えてモータウンとの契約更改に臨み、完全な創作の自由と出版権を自らの手に勝ち取った彼が、前作『Music of My Mind』で切り拓いた新境地を極限まで押し広げ、世界的な大絶賛を浴びた作品である。

制作背景とジェフ・ベックとの邂逅

本作では前作に続き、巨大モジュラー・シンセサイザー「TONTO」の開発者であるマルコム・セシルとロバート・マーゴレフがアソシエイト・プロデューサー兼エンジニア/Moogプログラマーとして参加。ロンドンのAir Studios、ニューヨークのElectric Lady Studios、ロサンゼルスのCrystal StudiosやRecord Plantなど複数のスタジオを股にかけて録音された。

歴史的名曲「Superstition(迷信)」は、スタジオを訪れていた英ギタリストのジェフ・ベックが叩いたファンキーなドラム・ビートに触発され、スティーヴィーがホーナー・クラビネットのリフを即興で編み出して誕生した。当初はベックに提供する約束だったが、モータウン社長ベリー・ゴーディや制作陣が絶対のメガヒットを確信し、スティーヴィー自身のシングルとして先行リリースさせた逸話はあまりに有名である(ベックは「Lookin For Another Pure Love」にギターで参加し、後に自身のバンドBBAで「Superstition」をカバーした)。

また、本作の見開きジャケットの表面と内側には、アルバムのアートワークとして史上初めて点字(Braille)によるメッセージが刻印された。「Here is my music. It is all I have to tell you how I feel. Know that your love keeps my love strong. – Stevie」という言葉が刻まれており、音楽を通じて世界と対話しようとするスティーヴィーの真摯な意志が込められている。

時代の文脈

1970年代初頭のモータウンにおいて、従来の徹底した分業制・管理システムから脱却し、マーヴィン・ゲイ『What's Going On』と並んでアーティスト主導のコンセプチュアルな作品制作を確立した記念碑的転換点である。本作を皮切りに『Innervisions』『Songs in the Key of Life』へと続く、スティーヴィーの「黄金のクラシック期」の本格的な幕開けを告げた。ウォーターゲート事件前夜の米国社会の欺瞞やゲットーの苦難を鋭く突いた「Big Brother」など、深い社会的洞察も随所に織り込まれている。

サウンドと聴きどころ

Hohner Clavinet D6の鋭利なカッティングとTONTOシンセサイザー、そしてスティーヴィー自身による躍動的なドラムスが炸裂する「Superstition」のグルーヴは、ファンク史上最高峰の演奏と称えられる。

ジム・ギルストラップとラニ・グローヴスのボーカルから始まる至福のメロディ「You Are The Sunshine Of My Life」、デヴィッド・サンボーンの情熱的なサックスが彩る「Tuesday Heartbreak」、クラビネットとMoogベースの弾き語りによる「Big Brother」、そして息をのむほど美しいバラード「You And I」など、全編にわたって天才のひらめきと有機的なシンセサイザーの音響構築が息づいている。

後世への影響

シンセサイザーを単なる新奇な電子効果音ではなく、生楽器と同等以上の豊かな感情表現ツールとしてポップ・ミュージックに定着させた功績は計り知れない。「Superstition」のリフやビート、「You Are The Sunshine Of My Life」の旋律は、世代やジャンルを越えて無数のアーティストにカバー、サンプリングされ続けている。

アルバムはBillboard 200で3位、R&Bチャートで1位を獲得し、「Superstition」と「You Are The Sunshine Of My Life」の2曲が連続して全米総合シングルチャート1位を制覇。第16回グラミー賞でも最優秀男性ポップ・ボーカル賞、最優秀男性R&Bボーカル賞、最優秀R&B楽曲賞の3部門を受賞するなど、ポピュラー音楽の可能性を劇的に拡張した20世紀屈指の名盤である。

トラックリスト

  1. A1 You Are The Sunshine Of My Life 2:45
  2. A2 Maybe Your Baby 6:45
  3. A3 You And I (We Can Conquer The World) 4:39
  4. A4 Tuesday Heartbreak 3:09
  5. A5 You've Got It Bad Girl 4:55
  6. B1 Superstition 4:40
  7. B2 Big Brother 3:35
  8. B3 Blame It On The Sun 3:28
  9. B4 Lookin For Another Pure Love 4:45
  10. B5 I Believe (When I Fall In Love It Will Be Forever) 4:48

動画プレイリスト

公開: 2026年10月

このアーティストについて

Stevie Wonder

Stevie Wonder

Stevie Wonderは、アメリカ・ミシガン州サギノー出身のシンガー、作曲家、マルチインストゥルメンタリスト、そして社会活動家だ。1950年5月13日生まれ...

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