Rotary Connection - The Rotary Connection (1968)
Rotary Connection『The Rotary Connection』──チェスが仕掛けたサイケデリック・ソウルの出発点
Rotary Connectionのデビュー作『The Rotary Connection』は、1968年にUSのCadet Conceptから登場したアルバムで、のちのグループ像を決定づけた最初の一枚である。レーベル側の仕掛け人は、Chessレコード創業者レナード・チェスの息子マーシャル・チェス。そこに、クラシックやジャズの素養を持つチャールズ・ステップニーが加わり、ブルースとR&Bで知られるChess系の環境に、当時のサイケデリックな空気を持ち込んだ。
この作品の面白さは、ロック、ソウル、ジャズ、室内楽の要素が、ひとつのバンドの音として無理なく同居している点にある。ボーカルはミニー・リパートン、シドニー・バーンズ、ミッチ・アリオッタら複数人で担い、バックにはフィル・アップチャーチ、ピート・コージー、モリス・ジェニングスといったChess周辺の実力派が並ぶ。さらに、シカゴ交響楽団のストリングスが加わり、普通のバンド録音とは違う厚みを作っている。
サイケデリックな改作と、短い音響断片
収録曲は、ローリング・ストーンズの「Lady Jane」「Ruby Tuesday」、ボブ・ディランの「Like a Rolling Stone」、サム&デイヴの「Soul Man」といったカバー、そして「Amen」やタイトル曲などのオリジナルで構成される。その合間に、「Rapid Transit」「Pink Noise」「Black Noise」のような数十秒の小品が挟まれ、曲と曲のあいだを切れ目なくつないでいく。
この短い断片が、アルバム全体の流れをかなり特徴づけている。単なる曲集ではなく、ラジオの周波数をまたぐような感触があり、曲の輪郭が少しずつ溶けていく。シタールなど東洋的な楽器も使われ、当時のサイケデリック・ロックの文法をソウルの側に持ち込んだ形になっている。
ミニー・リパートンの存在感
本作で特に印象に残るのは、まだソロで大きく知られる前のミニー・リパートンの声である。後年の代表曲で聴かれるような伸びやかな歌唱以前に、この時点では声そのものがアレンジの一部として扱われている。旋律を前に押し出すというより、他の楽器と同じ位置で音の層を作る役割が大きい。Rotary Connectionというプロジェクト自体が、そうした“声の使い方”を含めて設計されていた印象が強い。
チャールズ・ステップニーの編曲も重要で、ヴィブラフォン奏者、アレンジャー、プロデューサーとして培った感覚がよく出ている。ステップニーはキーボードも担当し、マーシャル・チェスはテルミンで参加している。こうした役割分担も、普通のロック・バンドとはかなり違う。
同時代のChess系サイケデリック路線の中心
このアルバムは、Chess系レーベルが1960年代後半に試みたサイケデリック路線の中心にある作品でもある。同じ流れの中には、マディ・ウォーターズ『Electric Mud』やハウリン・ウルフ『The Howlin' Wolf Album』があり、ブルースの伝統を新しい形に組み替えようとする動きが見える。Rotary Connectionはその中でも、最もコンセプチュアルで、実験色の強いグループとして機能している。
Billboard 200で最高37位を記録したことからも、単なる周辺企画にとどまらない反応があったことがわかる。Billboard誌の1968年2月24日号で好意的に扱われたという点も、当時の受け止められ方を示している。Cadet Concept自体は長続きしなかったが、この作品はそのレーベルの方向性をもっとも端的に示す一枚になっている。
オリジナル盤としての位置づけ
今回のUS盤は1968年のオリジナルで、ステレオ版。モノラル盤も同時に存在しており、カタログ番号はLP-312。ラベル表記では出版社名に“Music”が付かない点も、当時の仕様として押さえておきたいところである。初出時点の空気をそのまま持つ一枚として見れば、後年の再評価よりも、まずはChess一派が1968年にどこへ向かおうとしていたかがよく見える。
Rotary Connectionはこの後も複数のアルバムを残すが、その出発点にある本作は、グループの核を最もストレートに示す内容になっている。ソウルの歌、ロックの曲、サイケデリックな編集、そしてステップニーの編曲が一体化した、1968年らしい実験の記録である。
トラックリスト
- Trip 1
- A1 Amen 3:56
- A2 Rapid Transit 0:38
- A3 Turn Me On 3:17
- A4 Pink Noise 0:22
- A5 Lady Jane 4:57
- A6 Like A Rolling Stone 4:48
- Trip 1 (cont.)
- B1 Soul Man 2:58
- B2 Sursum Mentes 0:44
- B3 Didn't Want To Have To Do It 3:08
- B4 Black Noise 0:23
- B5 Memory Band 3:46
- B6 Ruby Tuesday 4:48
- B7 Rotary Connection 2:46