A Certain Ratio - To Each... (1981)
A Certain Ratio『To Each...』
マンチェスターのポスト・パンク/ファンク・バンド、A Certain Ratioが1981年にFactory Records(FACT 35)から発表した初の公式フルレングス・ヴァイナル・アルバム。先行のカセット限定作『The Graveyard and the Ballroom』を経てリリースされた本作は、名匠マーティン・ハネット(Martin Hannett)をプロデューサーに迎え、全英インディペンデント・アルバム・チャートで1位を獲得した初期の重要作である。
制作背景・エピソード
録音は1980年秋、バンドのニューヨーク公演(HurrahやDanceteriaなど)の渡米スケジュールの中で行われた。ファクトリーの手配により、マーティン・ハネットとともに米ニュージャージー州イーストオレンジのEastern Artists Recording Studioに入り、ベーシック・トラックを録音。その後英国へ持ち帰り、ストックポートのStrawberry Studiosでハネットによる緻密なミックスが施された。
アートワークはファクトリーのヴィジュアル・アイデンティティを確立したピーター・サヴィルが手掛け、冷徹でストイックな美学をパッケージ全体に反映させている。
時代の文脈
1981年は、ポスト・パンクの硬質で陰鬱な実験性と、ニューヨークのノー・ウェイヴやアンダーグラウンド・クラブ(ESG、Liquid Liquid、Defunktなど)のダンス・グルーヴが交錯し、「ミュータント・ファンク」や「パンク・ファンク」と呼ばれる新たな潮流が英米で同時多発的に勃興した時代。ポップ・グループやギャング・オブ・フォーと並び、A Certain Ratioはその最前線に立っていた。
ファクトリー主宰者のトニー・ウィルソンは彼らを「ジョイ・ディヴィジョンに欠けていたポップ・センスのすべてを持っている」と絶賛し、レーベルを代表する最重要アクトとして熱烈に後押しした。
後世への影響
ドナルド・ジョンソンの強靭なドラミングとジェズ・カーのうねるスラップ・ベース、冷ややかなトランペットやパーカッション、そしてハネット特有の研ぎ澄まされた空間処理(リバーブとディレイ)が生み出すサウンドは唯一無二。不穏なファンク・ビートが蠢く「Felch」や「Forced Laugh」、亡きイアン・カーティスへの追悼を思わせる陰影深い「Winter Hill」など、過剰な装飾を削ぎ落としたストイックなグルーヴが際立つ。
白人インディ・バンドがファンクやダブのリズムを脱構築した本作の音響美学は、後年のマッドチェスター・ムーヴメントや、2000年代初頭のダンス・パンク/ポスト・パンク・リバイバル(LCD Soundsystem、!!!、The Raptureなど)に多大なインスピレーションを与えた。冷徹なポスト・パンクと漆黒のダンス・ミュージックを結ぶ不朽のクラシックである。
トラックリスト
- A1 Felch 3:45
- A2 My Spirit 2:28
- A3 Forced Laugh 5:53
- A4 Choir 2:51
- A5 Back To The Start 7:49
- B1 The Fox 3:46
- B2 Loss 3:23
- B3 Oceans 3:30
- B4 Winter Hill 12:45
動画プレイリスト
このアーティストについて
A Certain Ratioは、1970年代後半にマンチェスターで結成されたイギリスのポストパンク/インディー・ファンク・バンドだ。名前はブライアン・イーノ...
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