LeRoy Hutson - Hutson (1975)
Leroy Hutson 1975

LeRoy Hutson - Hutson (1975)

Funk / Soul Funk Soul

LeRoy Hutson / Hutson (1975)

リロイ・ハトソンの『Hutson』は、1975年にCurtomから出たソロ3作目のアルバム。前作『Love Oh Love』(1973年)、『The Man!』(1974年)に続く流れの中にあり、シカゴ・ソウルの匂いを強く残しながら、より洗練されたソングライティングと演奏を前に出した一枚として知られている。元インプレッションズのリード・シンガーという経歴を持つ人物だけに、歌の運びに無理がなく、フレーズの置き方にも独特の落ち着きがある。

ハトソンは1945年生まれ。大学では当初歯学を学んでいたが、ダニー・ハサウェイの影響で音楽理論へと進み、のちにカーティス・メイフィールドの周辺へつながっていく。1971年にはメイフィールドの後任としてインプレッションズのリード・ボーカルを務め、その後ソロへ移行した。本作は、その流れの中で作られた作品で、Curtomとの関係を保ちながら録音されたアルバムでもある。

シカゴで録音された、演奏主体のソウル盤

録音はシカゴのCurtom Studios。クレジットを見ると、ハトソン自身がアレンジを手がけ、リード・ボーカルだけでなくフェンダー・ローズ、ピアノ、シンセサイザーまで担当している。つまり本作は、歌手アルバムでありながら、鍵盤奏者としての感覚も前面に出た内容になっている。参加メンバーもシカゴ色が濃く、ギターにフィル・アップチャーチ、ベースにジョセフ・スコットやビクター・チャンドラー、サックスにジェリー・ウィルソン、コーラスにキティ・ヘイウッド・シンガーズという顔ぶれ。Curtom周辺の制作体制が、そのまま盤の輪郭を作っている。

レーベル表記では、製造・配給がWarner Bros. Records Inc.になっており、Curtomの作品らしい黒っぽいソウルの質感に、70年代半ばのメジャー流通盤らしい整った音像が重なっている。サンタ・マリア・プレスを示すランアウトの“S”刻印も、このUS盤の確認ポイントとして知られている。

収録曲の核は「All Because Of You」

本作でまず触れられるのは「All Because Of You」。7分に及ぶ長尺で、シングルとしてもR&Bチャート36位を記録した。アルバム全体の中でも存在感が大きく、ハトソンのメロディ感覚と、曲を引っ張るボーカルの粘りがまとまった1曲になっている。派手な展開で押すのではなく、リズムの流れと歌の細かな起伏で聴かせる作り。

もう1枚のシングル「Can’t Stay Away」もR&Bチャート46位を記録している。こちらはアルバムの中で、ハトソンの持つメロウさとソウルの骨格がより端的に出る曲として扱われることが多い。大ヒット作ではないが、収録曲単位で見ると、どちらも彼の代表曲群に数えられることがある。

アルバムとしての位置づけ

『Hutson』は、ソロ転向後のハトソンが、作曲家・歌手・アレンジャーとしての輪郭を固めていく時期の作品。インプレッションズ時代の流れを引きずるだけでなく、自分の名義で何を鳴らすかを明確にした盤として見られている。ビルボードのソウル・アルバム・チャートでは46位を記録し、商業的には大きな成功ではなかったが、のちに再評価が進んだ。

1980年代末から90年代初頭にかけての英国のレア・グルーヴ再発見の流れの中で、ハトソンの作品は改めて注目を集めた。本作もその文脈で語られることが多く、ヒップホップやR&Bの側からサンプリングや参照が行われてきた。シカゴ・ソウルの中でも、カーティス・メイフィールド周辺の知的な作りと、より個人的な歌心が同居するタイプの作品として位置づけられている。

聴きどころ

実際に通して聴くと、派手な山場を連発するタイプではなく、曲ごとの温度差を丁寧に積み上げる構成が印象に残る。ハトソンの声は強く押し出すというより、鍵盤のフレーズやコーラスの隙間に自然に入っていく。そこにシカゴ勢の演奏が絡み、グルーヴが前に出すぎず、歌の輪郭を支える。ファンク寄りのリズム、ソウル寄りのメロディ、そして70年代半ばらしい空気感が一体になったアルバムである。

1975年のUSオリジナル盤として見ると、Curtomのカタログの中でも、レーベルの持つ黒人音楽史の流れとハトソン個人の作家性がよく噛み合った1枚。華やかな名盤として語られることは多くないが、曲、演奏、録音のまとまりで評価されてきた作品である。

トラックリスト

  1. A1 All Because Of You 7:03
  2. A2 I Bless The Day 4:45
  3. A3 It's Different 4:42
  4. B1 Cool Out 3:00
  5. B2 Lucky Fellow 5:02
  6. B3 Can't Stay Away 6:33
  7. B4 So Much Love 3:19

動画プレイリスト

公開: 2026年9月
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