Nina Simone - To Love Somebody (1969)
Nina Simone 1969

Nina Simone - To Love Somebody (1969)

Pop Jazz Blues Funk / Soul Vocal Soul-Jazz

Nina Simone『To Love Somebody』(1969 / RCA Victor)

Nina Simoneが1969年にRCA Victorから発表した『To Love Somebody』は、60年代末の彼女の立ち位置をそのまま映したようなアルバムだ。ジャズ・シンガーという枠だけでは収まらない歌い手であり、ピアニストであり、アレンジャーでもあるNina Simoneが、同時代のポップスやロック、フォークの楽曲を自分の語法へ引き寄せていく。録音は1967年から1969年にかけてニューヨークのRCA Studiosで行われ、演奏にはWeldon Irvine、Al Schackman、Gene Perlaらが参加している。女性コーラスを含む厚みのある編成も、この時期の彼女の作品らしい構成だ。

同時代曲を自分の曲として鳴らすアルバム

この作品の中心にあるのは、Bee Geesの「To Love Somebody」だ。タイトル曲であり、Nina Simone版は英国でヒットを記録した。原曲の持つポップなメロディを保ちながら、彼女は声の置き方とピアノのタッチで温度を変えていく。甘さだけに寄らず、歌の輪郭がはっきり残る進め方で、原曲とは別の重みが出る。

収録曲の選び方もはっきりしている。Bob Dylanの「I Shall Be Released」「Just Like Tom Thumb’s Blues」「The Times They Are A-Changin’」、Leonard Cohenの「Suzanne」、Pete Seegerの「Turn! Turn! Turn!」など、当時のソングライターたちの曲が並ぶ。いずれも有名曲だが、Nina Simoneの手にかかると、フォークやロックの側にあった曲が、ゴスペルやソウルの感触を帯びる。単なるカヴァー集ではなく、60年代後半の歌の流れを一つの視点でまとめたアルバムとしてまとまっている。

「Revolution」と時代の空気

このアルバムで特に印象に残るのが、唯一のオリジナル曲「Revolution」だ。Nina SimoneとWeldon Irvineの共作で、シングルではPart 1とPart 2に分けて出された。The Beatlesの同名曲とほぼ同時期の楽曲で、当時の政治意識や社会の緊張がそのまま音に出ている。歌の構成はシンプルだが、フックの置き方に強さがあり、彼女のレパートリーの中でも時代性の濃い一曲になっている。

Nina Simoneは60年代に公民権運動と深く結びついた表現者でもあった。この時期の彼女の歌には、個人的な愛情や喪失だけでなく、社会の変化に対する反応がそのまま流れ込んでいる。DylanやCohenの曲を選ぶ姿勢にも、同時代の言葉を自分の声で引き受ける感覚が出ている。

演奏と録音の輪郭

クレジットを見ると、Nina Simoneはヴォーカル、ピアノ、アレンジを担っている。ドラムのCharles D. Alias、オルガンのWeldon Irvine、ギターのAl Schackman、ベースのGene A. Perla、さらにJimmy Wisnerがアレンジと指揮で参加。録音はRCA Studiosのニューヨーク録音で、エンジニアはMike MoranとRay Hall。ライナーノーツはClaude Hallが担当している。

聴感上は、ピアノが前に出る場面と、コーラスやオルガンが空気を広げる場面の切り替えがはっきりしている。歌は常に中心にあるが、伴奏がそれをただ支えるだけでは終わらない。低音の押し出し、間の取り方、フレーズの置き直しが曲ごとに違い、Nina Simoneがアレンジまで含めて作品を組み立てていたことが伝わる。

1969年盤としての特徴

このUS盤はRCA VictorのLSP-4152。裏ジャケット右下にDynagrooveのロゴと説明が入り、さらに「Printed in U.S.A.」の表記がある点が、この盤を見分ける手がかりになっている。RCA Victorのブランドは1968年以降、意匠が切り替わっていく時期にあり、このアルバムもその流れの中にある。マトリクスのR表記はRockaway工場プレスを示す。

また、このアルバムは後年に別タイトルや別ジャケットで再発されている。オリジナルの1969年盤は、当時のRCA Victorの体裁と、60年代末のNina Simoneの表現をそのまま閉じ込めたものとして位置づけられる。ジャズ、ファンク/ソウル、ブルース、ポップという区分に収まりながら、実際の内容はもっと横断的だ。時代の曲を借りながら、歌い手自身の輪郭を強く残した一枚である。

トラックリスト

  1. A1 Suzanne 4:16
  2. A2 Turn! Turn! Turn! (To Everything There Is A Season) 3:37
  3. A3 Revolution (Part I) 2:48
  4. A4 Revolution (Part II) 1:48
  5. A5 To Love Somebody 2:38
  6. B1 I Shall Be Released 4:00
  7. B2 I Can't See Nobody 3:06
  8. B3 Just Like Tom Thumb's Blues 4:48
  9. B4 The Times They Are A Changin' 5:59

動画プレイリスト

公開: 2026年10月

このアーティストについて

Nina Simone

Nina Simone

Nina Simoneは、アメリカ出身のシンガー、ソングライター、ピアニスト、作曲家、アレンジャーであり、公民権運動の活動家でもあった人物だ。1933年2月...

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