The Sylvers - The Sylvers II (1973)
The Sylvers『The Sylvers II』
The Sylversのセカンド・アルバム『The Sylvers II』は、1973年9月にMGM傘下のPride Recordsからリリースされた作品(カタログ番号:PRD 0026)。メンフィス出身、ロサンゼルス育ちの兄弟姉妹によるグループが、ファミリー・ソウル/キッズ・グループの枠を遥かに超え、自作自演の卓越した音楽性とシネマティックなオーケストレーションを結実させた70年代ソウルの金字塔である。
制作背景と参加ミュージシャン
ジェリー・バトラーがプロデュースした1972年のデビュー作に続き、本作ではアイザック・ヘイズとの仕事で知られる名匠ジェリー・ピータース(Jerry Peters)とケグ・ジョンソン(Keg Johnson)が共同プロデュースを担当した。さらにデイヴィッド・クロフォード(David Crawford)がストリングスとホーンの華麗なアレンジを手掛け、名ドラマーのハーヴェイ・メイソン(Harvey Mason)がリズム・アレンジに参加。強靭なリズム・セクションと壮麗なオーケストラが融合する贅沢な制作体制が敷かれた。
全11曲中大半のソングライティングを手掛けたのは、後にSOLAR Records(ShalamarやThe Whispersなど)のメイン・プロデューサーとして80年代ブラック・ミュージック界を牽引することとなる長男レオン・シルヴァーズ3世(Leon Sylvers III)。当時20歳そこそこだったレオンによる緻密で洗練されたコード進行とベースラインが、グループの音楽的成熟を力強く牽引した。
サウンドと聴きどころ
本作の大きな魅力は、ジェリー・ピータースとデイヴィッド・クロフォードによる映画音楽のように壮大なストリングス/ホーン・アレンジと、ファンキーでタイトなアンサンブル、そして兄弟姉妹による無垢で瑞々しいヴォーカル・ハーモニーの融合にある。
緊迫感あふれるブラックスプロイテーション映画調のベースラインとブラスが唸るキラー・ファンク「Stay Away From Me」は、彼らの硬派な演奏力が炸裂する名曲。一方で、甘美なメロディと美しいヴォーカル・リレーが胸を打つ「We Can Make It If We Try」は、70年代メロウ・ソウルの頂点と称される至宝である。さらに、軽快なステップを踏む「Through The Love In My Heart」や「Handle It」、深遠なバラード「Cry Of A Dreamer」や「I Remember」、そしてビートルズの原曲を優雅なソウル・バラードへと再解釈したラストの「Yesterday」に至るまで、一切の隙がない。
時代の文脈と後世への影響
1970年代初頭はThe Jackson 5の大成功を受けて多くのファミリー・グループが登場したが、The Sylversは自ら楽曲を紡ぎ出すソングライティング能力と進歩的なアレンジで一線を画していた。ニュー・ソウル運動の精神とフィリー・ソウル的な甘美さを貪欲に吸収した本作は、初期Prideレーベル時代における彼らの芸術的最高峰となった。
1990年代以降、ヒップホップやレア・グルーヴのシーンにおいて本作は「究極のサンプリング・ソースの宝庫」として神格化された。「Stay Away From Me」はPete Rockが手掛けたGhostface Killah「Be Easy」で引用されたほか、「We Can Make It If We Try」はJ DillaやSlum Villageをはじめとする数多くのアーティストにサンプリングされ、現代のビート・カルチャーの聖典となっている。日本でも90年代のフリーソウル・ムーヴメントの中で再評価され、色褪せない輝きを放ち続けている。
トラックリスト
- A1 We Can Make It If We Try 2:40
- A2 Through The Love In My Heart 3:18
- A3 Handle It 2:40
- A4 I'll Never Let You Go 4:30
- A5 Cry Of A Dreamer 4:36
- B1 Stay Away From Me 3:43
- B2 I Don't Need To Prove Myself 3:33
- B3 Let It Be Me 5:00
- B4 Love Me, Love Me Not 3:20
- B5 I Remember 4:50
- B6 Yesterday 2:25