Yes - Time And A Word (1970)
Yes『Time And A Word』について
Yesの2作目となる『Time And A Word』は、1970年にUKでリリースされたアルバムだ。デビュー作の翌年に発表され、イエスが初期の編成から次の段階へ進む途中に置かれた作品として位置づけられている。表題曲「Time And A Word」をはじめ、クラシック音楽や既存曲の引用を交えた楽曲が並び、オーケストラを加えた制作でも知られる一枚だ。
制作背景・エピソード
録音は1969年12月から1970年2月にかけて、ロンドンのアドヴィジョン・スタジオで進められた。プロデュースはジョン・アンダーソンの旧友トニー・コルトン、エンジニアにはアトランティック・レコード欧州代表フィル・カーソンの推薦でエディ・オフォードが起用された。オフォードはこの時期からYesと関わり始め、後の『こわれもの』や『危機』へと続く黄金期のサウンドを決定づける重要な協力者となる。
本作で目立つのは、オーケストラの導入だ。ジョン・アンダーソンとクリス・スクワイアらの発案で、トニー・コックスが管弦楽の編曲と指揮を担当した。セッション・ブラス奏者や王立音楽大学の学生によるストリングスも加わり、バンド編成の外側に音を広げる試みが行われている。こうした構成は、収録曲の「No Opportunity Necessary, No Experience Needed」や「The Prophet」でもはっきり確認できる。
一方で、このオーケストラ導入はピーター・バンクスとの関係を悪化させた。バンクスは、オーケストラがギターやオルガンの役割を奪い、自身のギターがミックスの後退を余儀なくされたことに強く反発し、プロデューサーのコルトンとも対立を深めた。アルバム完成後の1970年4月にはバンクスが解雇され、その後任としてスティーヴ・ハウが加入する。
収録曲の素材も話題性がある。「No Opportunity Necessary, No Experience Needed」はリッチー・ヘヴンズの楽曲に映画『大いなる西部』のテーマをつなげた構成で、「The Prophet」ではホルストの組曲『惑星』の「木星」の旋律が引用されている。「Everydays」はバッファロー・スプリングフィールドのカバー曲。表題曲「Time And A Word」は、後年のツアーでもアコースティック編成やメドレーの中で取り上げられていく。演奏面では、クリス・スクワイアのリッケンバッカー・ベースが放つ歪んだアタック感と、ビル・ブルーフォードのジャズ仕込みの変則的なドラミングが早くも圧倒的な存在感を発揮している。
時代の文脈
1969年から1970年にかけての英国ロックでは、サイケデリック・ポップからプログレッシブ・ロックへの移行が進んでいた。Yesもその流れの中で、デビュー期のビート/サイケ路線から、より構成の大きいサウンドへ向かっていく。本作はその転換点にある。
同時代には、ザ・ナイスやディープ・パープルのように、ロックとクラシック音楽の接続を試みる動きが見られた。『Time And A Word』のオーケストラ導入も、その文脈に置かれている。さらに、アルバム完成後にスティーヴ・ハウが加入し、次作『The Yes Album』へつながっていく流れも、この作品の重要な位置を示している。
ジャケット面でも特徴がある。英国オリジナル盤はローレンス・サックマン撮影によるチェッカー柄と女性ヌードの構図だったが、アメリカ盤では差し替えが行われ、録音に参加していないスティーヴ・ハウが表紙に登場することになった。UK盤と米盤で異なる見え方を持つ点も、この作品ならではのエピソードだ。
評価とその後
当時のNMEでロイ・カーは、バンドの演奏力とオーケストラの調和を高く評価している。全英アルバム・チャートでは45位を記録し、Yesにとって初のチャートイン作品となった。アメリカではチャート入りはしていないが、バンドが次の段階へ進む直前の記録として残る一枚だ。なお、イエスが再び本格的にフル・オーケストラと共演を果たすのは、本作から31年後のアルバム『Magnification』(2001年)となる。
なお、アトランティック盤の情報としては、UKオリジナルのシングル・カバー、厚手の歌詞インサート、レーベル表記の違いなど、初期プレスならではの仕様も確認できる。こうした物理的な違いも含めて、『Time And A Word』は1970年のYesをそのまま閉じ込めた作品になっている。
トラックリスト
- A1 No Opportunity Necessary, No Experience Needed
- A2 Then
- A3 Everydays
- A4 Sweet Dreams
- B1 The Prophet
- B2 Clear Days
- B3 Astral Traveller
- B4 Time And A Word
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