Yes - Relayer (1974)
Yes『Relayer』
イエス(Yes)が1974年11月に発表した通算7作目のスタジオ・アルバム『Relayer(リレイヤー)』。前作の2枚組大作『Tales from Topographic Oceans(海洋地形学の物語)』のあとにリック・ウェイクマンが脱退し、後任として迎えた元レフュジー(Refugee)のスイス人キーボーディスト、パトリック・モラーツ(Patrick Moraz)が参加した唯一のスタジオ・アルバムである。
制作背景・エピソード
録音はクリス・スクワイアの自宅スタジオに名エンジニアのエディ・オフォード(Eddie Offord)の移動式機材を持ち込んで行われた。従来のクラシカルなシンフォニック・ロック路線から一転、モラーツの加入によってジャズ・フュージョン的なスピード感とアヴァンギャルドな即興性が大胆に導入された。
A面全編を占める22分の大作「The Gates Of Delirium(錯乱の扉)」は、トルストイの『戦争と平和』に触発された壮大な反戦組曲。中盤の戦闘シークエンスでは、廃品回収業者から調達した自動車のスプリングや金属スクラップをアラン・ホワイトをはじめメンバー総出で叩き鳴らし、狂気と混乱に満ちた戦闘の音響を生々しく表現した。激戦の果てに訪れる静謐な祈りのパート「Soon」は、のちにシングルとしてカットされ単独でも愛され続けている。
時代の文脈とサウンドの変革
1974年はマハヴィシュヌ・オーケストラやウェザー・リポート、リターン・トゥ・フォーエヴァーなど、ジャズ・ロック/フュージョン勢が世界的に大きな衝撃を与えていた時代だった。イエスはその熱気を貪欲に吸収し、変拍子と即興が超高速で激突するスリリングなサウンドへと大きく舵を切った。
スティーヴ・ハウは従来のギブソン製フルアコから鋭利なフェンダー・テレキャスターをメインに据え、モラーツのエレクトリック・ピアノやミニモーグ・シンセサイザーと火花を散らすインタープレイを展開。「Sound Chaser」における高速のサンバ調ポリリズムと変態的ギター/シンセ・ソロ、そしてペダル・スティール・ギターが叙情的な美しさを紡ぎ出す「To Be Over」まで、全3曲に凝縮された演奏の密度は極限に達している。
後世への影響
全英アルバム・チャート4位、全米Billboard 200で5位を記録。モラーツの在籍期間は短かったものの、本作が放った獰猛なアンサンブルと緊張感は、のちのプログレッシブ・メタルやテクニカル・フュージョン、マスロック勢に計り知れない影響を与えた。ロジャー・ディーン(Roger Dean)による幻想的かつ荒涼とした巨塔を描いたゲートフォールド・アートワークも含め、イエスの黄金期を代表する孤高のマスターピースとして高く評価されている。
トラックリスト
- A The Gates Of Delirium 21:55
- B1 Sound Chaser 9:25
- B2 To Be Over 9:08
動画プレイリスト
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