Quincy Jones - Back On The Block (1989)
Quincy Jones 1989

Quincy Jones - Back On The Block (1989)

Electronic Funk / Soul Contemporary R&B House

Quincy Jones『Back On The Block』(1989)

1989年11月にクインシー・ジョーンズ自身の主宰レーベルQwest Recordsからリリースされた記念碑的大作『Back On The Block』。自身名義のリーダー・アルバムとしては、世界的ヒットを記録した『The Dude(愛のコリーダ)』(1981年)以来約8年ぶりとなる作品である。ビバップの草創期からマイケル・ジャクソンの諸作まで、半世紀にわたりポピュラー音楽の最前線を牽引してきた巨匠が、世代・ジャンル・人種の垣根をすべて取り払い、20世紀ブラック・ミュージックの全貌を一つの「街区(ブロック)」へと集大成した歴史的傑作である。

制作背景・エピソード

録音・ミックスは、マイケル・ジャクソンの名盤群でもクインシーと鉄壁のコンビを組んだ盟友ブルース・スウェーディエンが担当。独自の「Acusonic Recording Process」を駆使した極めて緻密で立体的な音響空間が構築された。

本作最大の驚きは、音楽史上二度と再現不可能な豪華絢爛を極めた参加陣にある。マイルス・デイヴィス、ディジー・ガレスピー、エラ・フィッツジェラルド、サラ・ヴォーン、ハービー・ハンコック、ジョー・ザヴィヌル、ジョージ・ベンソンらジャズ界の巨匠たち。さらに、アイス-T、ビッグ・ダディ・ケイン、メリー・メル、クール・モー・ディーといった気鋭のヒップホップMC陣。加えてレイ・チャールズ、チャカ・カーン、バリー・ホワイト、ジェームス・イングラム、エル・デバージ、テヴィン・キャンベル、Take 6など、ソウル/R&Bのトップ・シンガーが一堂に会した。サラ・ヴォーンとエラ・フィッツジェラルドにとっては、本作が生涯最後のスタジオ録音となった。

時代の文脈

1980年代末、ヒップホップはストリートのアンダーグラウンドから巨大な世界的ポップ・カルチャーへと急成長を遂げていたが、伝統的なジャズ界や年配の音楽愛好家からは依然として「単なるおしゃべり」として排斥される傾向が強かった。これに対し、1950年代のビバップ期を当事者として生きたクインシー・ジョーンズは、「ラップこそが現代のビバップであり、若者のストリート・インプロヴィゼーションである」と喝破。スウィング、ビバップ、ファンク、ゴスペル、ブラジリアン、ハウス、ニュージャックスウィング、そしてラップを一本の巨大な大河として束ね、黒人音楽の揺るぎない歴史的連続性を世界に証明してみせた。

サウンド・聴きどころ

ウェザー・リポートの名曲をカバーした「Birdland」は本作の白眉。マイルスとディジーのトランペット、ベンソンのギターが火花を散らし、エラとサラのスキャット、Take 6の精緻極まるアカペラが絡み合う様は、まさにジャズ・フュージョンの最高到達点だ。また、ブラザーズ・ジョンソンの名曲をレイ・チャールズとチャカ・カーンが圧倒的な熱量でデュエットする「I'll Be Good To You」、バリー・ホワイトの艶やかな語りと美しいハーモニーがとろけるような官能のバラード「The Secret Garden」、当時12歳だったテヴィン・キャンベルの無垢なハイトーンが輝く「Tomorrow」など、全曲が至高のプロダクションで満たされている。

後世への影響

本作がグラミー賞で主要部門を独占したことは、ヒップホップという表現形式がポピュラー音楽界の最高峰の権威によって正統に認められる決定打となった。また、「The Secret Garden」は90年代に全盛を極めるアーバン・スロウ・ジャムの決定的なひな型となり、テヴィン・キャンベルの本格的キャリアの扉を開くなど、90年代のR&B/ネオソウル黄金期への架け橋となった。

評価・チャート

第33回グラミー賞(1991年)において、最高栄誉である「最優秀アルバム賞(Album of the Year)」をはじめ、最優秀ジャズ・フュージョン・パフォーマンス賞(「Birdland」)、最優秀ラップ・パフォーマンス賞(「Back On The Block」)など計7部門を受賞。米Billboard 200で最高9位、Top R&B/Black Albumsチャートで1位を獲得し、プラチナ・ディスクに認定された。20世紀の音楽史を総括し、未来へと受け渡した奇跡のモニュメントである。

トラックリスト

  1. A1 Prologue (2 Q's Rap) 1:04
  2. A2 Back On The Block 6:34
  3. A3 I Don't Go For That 5:11
  4. A4 I'll Be Good To You 4:54
  5. A5 The Verb To Be 0:29
  6. A6 Wee B. Dooinit 3:32
  7. A7 The Places You Find Love 6:24
  8. B1 Jazz Corner Of The Word 2:53
  9. B2 Birdland 5:33
  10. B3 Setembro (Brazilian Wedding Song) 5:04
  11. B4 One Man Woman 3:44
  12. B5 Tomorrow (A Better You, Better Me) 4:46
  13. B6 Prelude To The Garden 0:54
  14. B7 The Secret Garden 6:40

動画プレイリスト

公開: 2026年10月

このアーティストについて

Quincy Jones

Quincy Jones

Quincy Jonesは、アメリカのレコード・プロデューサー、指揮者、編曲家、映画音楽作曲家、テレビ・プロデューサー、そしてトランペッターだ。1933年3...

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