Tatsuro Yamashita = 山下達郎 - Melodies (1983)
Tatsuro Yamashita = 山下達郎 1983

Tatsuro Yamashita = 山下達郎 - Melodies (1983)

Rock Pop Jazz Funk / Soul Funk Jazz-Rock Soul Ballad City Pop

山下達郎『Melodies』

1983年6月8日に発売された山下達郎のスタジオ・アルバム。ムーン・レーベル移籍第1弾で、山下にとっては所属アーティストであると同時に、レーベル側の役員でもあった時期の作品でもある。前作『FOR YOU』で強まっていた夏のイメージから距離を取りつつ、タイトルどおり「MELODIES AND MEMORIES」を軸に組み立てられた一枚で、山下自身は「プロデューサー山下達郎」が「シンガーソングライター山下達郎」に作らせたアルバムと捉えていたという。

制作背景・エピソード

制作では作詞面の変化が大きい。これまで多くを吉田美奈子に任せていたが、本作では10曲中8曲の詞を山下自身が書いている。テーマは懐かしさとイリュージョンで、都市生活者の疎外感やレイ・ブラッドベリ的な世界観を織り込んだとされる。山下が弾き語りの小品「黙想」を入れたのも、その構成意図に沿ったものだった。

録音はCBS・ソニー六本木スタジオ。演奏面では、曲ごとに作り方がはっきり分かれている。「悲しみのJODY (She Was Crying)」は、1982年から1年間TBSラジオで放送された『サウンズ・ウィズ・コーク』のテーマ曲として作ったインストが元になっており、副題もその番組へのオマージュ。こうした8ビートはスタジオ・ミュージシャンの演奏では個性的な音にならないという理由で、ドラム、ベース、ギター、鍵盤などをほぼ山下一人の多重録音で重ね、テナー・サックスのソロだけ井上大輔が担当した。フェードアウト直前のバスドラムの6連打は、ハル・ブレインの影響だと山下が述べている。

「高気圧ガール」はANA沖縄キャンペーンのソングで、タイトルは眞木準のCMコピーがそのまま使われた。途中の「高気圧の溜息」は竹内まりやによるもの。当初はアカペラで始まり、アカペラとパーカッションで終わる構想もあったが、重くなったためシングルと同じテイクにまとまった。「夜翔 (Night-Fly)」は、前年にドナルド・フェイゲンが『The Nightfly』を出していたため、似ていると思われないよう漢字の題にしたという。

カバー曲の「Guess I'm Dumb」は、ブライアン・ウィルソン作曲、ラス・タイトルマン作詞で、ブライアンがツアーを離れた際にビーチ・ボーイズのツアーに加わったグレン・キャンベルのために書かれた曲。ここでも山下の一人多重録音が使われている。「メリー・ゴー・ラウンド」は、恋人と夜の遊園地に忍び込むイメージの詞で、山下が本作で最も気に入っている詞だと語った曲。「色褪せた水玉のベンチ」は後楽園ゆうえんちに実在したものを題材にしている。「あしおと」は盛り場の花屋の店員を主人公にしたシカゴ・ソウル風の曲。バンドで録った曲の演奏は、青山純(ドラム)、伊藤広規(ベース)、難波弘之、佐藤博(鍵盤)らが中心になっている。

そして「クリスマス・イブ」。もともとは1981年ごろに竹内まりやのアルバム用に書いたが使われず、山下が「もったいないので自分でやることにした」と話している曲だ。バロック音楽に見られるクリシェのコード進行から発想し、シュガー・ベイブ時代の未完成曲の冒頭「雨は夜更け過ぎに」が浮かんだことで、失恋とクリスマスを結ぶ詞が一気にできたという。間奏ではパッヘルベルの「カノン」をスウィングル・シンガーズ風のアカペラで一人多重録音しており、8小節に48テイク、8時間を要したとされる。山下は当時、クリスマス・ソングでヒットを狙う下心はなかったと述べている。

時代の文脈

前作『FOR YOU』の成功で、山下には夏のイメージが定着していた。本作はそこから路線を変える作品として出され、発売当時には「夏らしくない」「開放感に欠ける」といった批判もあったが、山下はそれを確信犯的な変更と受け止め、その後も活動を続けられた理由のひとつに挙げている。山下自身は、30歳でのレーベル移籍を大きなリスクと見ており、その時点で活動期間をあと5年ほどと考えていたとも振り返っている。その中で、流行りものではない音楽、10代のころに好きだった非主流の音楽に近いものをやりたいと考えていた。

アルバムはオリコン週間LPチャートで初登場1位、1983年の年間7位を記録し、『FOR YOU』を上回る売り上げとなった。

後世への影響

本作の長期的な存在感を決定づけたのは「クリスマス・イブ」だった。1983年12月に3万枚限定の12インチ・ピクチャー・ディスクで出た時点ではオリコン最高44位だったが、1988年にJR東海のCMで再び注目され、1989年12月にはオリコン週間1位を獲得。発売から1位到達まで6年6か月で、当時の最長記録になった。その後も毎年チャートに入り続け、オリコン週間TOP100入りの連続記録としてギネス世界記録に認定されている。山下は『OPUS』のライナーノーツで、この曲を「間違いなく私の代名詞となって残るであろう一曲」と書いている。

この曲の長いヒットに引っ張られる形で、『Melodies』自体も売れ続けた。2013年には30周年記念盤も出ている。

トラックリスト

  1. A1 悲しみのJody (She Was Crying) 3:50
  2. A2 高気圧ガール 4:20
  3. A3 夜翔 (Night-Fly) 4:22
  4. A4 Guess I'm Dumb 3:11
  5. A5 ひととき 3:59
  6. B1 メリー・ゴー・ラウンド 6:17
  7. B2 Blue Midnight 4:14
  8. B3 あしおと 3:53
  9. B4 黙想 1:33
  10. B5 クリスマス・イブ 4:13

動画プレイリスト

公開: 2026年10月

このアーティストについて

Tatsuro Yamashita = 山下達郎

Tatsuro Yamashita = 山下達郎

山下達郎は、1953年2月4日生まれ、東京・池袋出身のシンガーソングライター、音楽プロデューサーだ。ロック、ポップ、ファンク/ソウル、ジャズをまた...

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