Pink Floyd - Pink Floyd At Pompeii MCMLXXII (1981)
Pink Floyd / Pink Floyd At Pompeii MCMLXXII
Pink Floydの『Pink Floyd At Pompeii MCMLXXII』は、1971年10月にポンペイの古代円形劇場で撮影された演奏を軸にした映像作品を、2025年にあらためてアナログ盤としてまとめ直した作品だ。Pink Floydの初期から中期への移行点を切り取った記録であり、スタジオでの緻密な作業と、ライヴ演奏の緊張感が同じ作品の中に並ぶ。バンド史の中では、『Meddle』期の空気をそのまま封じ込めた資料性の高い一枚として位置づけられる。
作品の背景
もともとの素材は、観客を入れずに撮影された映画『Pink Floyd: Live at Pompeii』に由来する。ローマ帝国時代の遺跡を舞台に、バンドが空間そのものを響かせるように演奏する構成で、当時のロック映像としてはかなり特異な作りだった。ライブ会場の熱気を前面に出すタイプではなく、空の劇場、石造りの壁面、反響、風景の静けさが演奏に絡む。Pink Floydがこの時期に持っていた実験性が、そのまま映像と音に出ている。
2025年盤では、2025 Mix by Steven Wilsonと明記されており、音像は現代的に整理された形で提示されている。オリジナルの映像・音源を現在の耳で聴き直すための再編集盤で、アナログ盤としては初めてこの企画が広く流通した形になる。マット仕上げのゲートフォールド仕様で、内側には光沢のある写真を配置。さらに紙製インナー2枚と、60×90cmサイズの大型ポスターも付属する。パッケージ面でも、単なる音源再発ではなく、映画作品としての雰囲気を残す作りだ。
収録曲と聴きどころ
この作品の核は、やはり長尺曲「Echoes」にある。『Meddle』収録のこの曲は、Pink Floydの初期代表作の中でも重要な位置を占めていて、静かなパートから音の層を重ねていく構成が、この時期のバンドの方向性をよく示している。ギター、ベース、ドラム、キーボードがそれぞれ独立した動きをしながら、全体では一つの流れにまとまっていく感覚が強い。ライヴというより、演奏の過程そのものを見せる記録に近い。
ほかにも、初期曲から中期の代表曲までが並び、Syd Barrett時代の名残と、David Gilmour加入後のバンドの輪郭が同じ作品内で見えてくる。Roger Watersの低音は構造を支え、Richard Wrightの鍵盤は空間を広げ、Nick Masonのドラミングはテンポを固定しすぎずに進む。Gilmourのギターは旋律を前に出しながらも、ソロで押し切るというより、音の余白を残している。このバランスが、後のプログレッシブ・ロックに引き継がれていくPink Floydらしさにつながる。
2025年盤とオリジナル映像作品の距離
この2025年盤は、1972年公開の映像作品をベースにしながら、現代の再発企画として整えられている。レコードとして聴くと、映像の存在を前提にした作品なのに、音だけでも場面の切り替わりが追いやすい。曲間の空気や残響が残されていて、演奏の前後にある静けさまで作品の一部として機能している。オリジナルの映像作品を知っている人には、その場の広がりが思い出される構成だし、初めて触れる場合でも、バンドが「演奏を見せる」のではなく「空間を作る」方向に向かっていたことがわかる内容になっている。
盤面のクレジットでは、2025年の制作として整理され、Abbey Roadでカッティングされたことも明記されている。EU盤として流通し、ワールドワイドでのリリースになっている点も今らしい。対して、当時のオリジナル作品は映画としての性格が強く、今回のLPはその記録をアナログで再提示するもの。映像作品から音源作品へ、さらに再発盤として現在に接続された形だ。
Pink Floydの中での位置づけ
Pink Floydは、サイケデリック・ロックからプログレッシブ・ロックへと重心を移していく過程で、音の構造や空間の使い方を徹底して追い込んだバンドだが、この『Pompeii』はその変化がはっきり見える時期の記録になっている。大きなヒット曲を並べるというより、作品全体の流れで聴かせる作りが前面にある。のちの『The Dark Side of the Moon』や『Wish You Were Here』のような完成度の高いアルバム以前に、Pink Floydがライブとスタジオの境界をどう扱っていたかを示す資料としても重要だ。
同時代の英国ロックの中でも、ここまで映像と音の関係を作品の中心に置いた例は多くない。King CrimsonやYesのように演奏技術を前に出すバンドとは別の方向で、Pink Floydは音の間、空間、反響を作品化していった。その流れが、このポンペイ録音ではかなりはっきりしている。派手な演出よりも、場の条件そのものを使って音を組み立てる姿勢が残る一枚だ。
まとめ
『Pink Floyd At Pompeii MCMLXXII』は、Pink Floydの転換期を記録した作品を、2025年のアナログ盤として再提示したものだ。映画としての異色さ、演奏の緊張感、そして『Meddle』期のバンドの輪郭が、ひとまとまりで残されている。代表曲「Echoes」を含む収録内容も含めて、Pink Floydの初期から中期への流れを追ううえで外せない記録盤になっている。
トラックリスト
- A1 Pompeii Intro 3:30
- A2 Echoes - Part 1 11:55
- A3 Careful With That Axe, Eugene 6:37
- B1 A Saucerful Of Secrets 10:10
- B2 Set The Controls For The Heart Of The Sun 10:29
- C1 One Of These Days 5:55
- C2 Mademoiselle Nobs 1:49
- C3 Echoes - Part 2 13:23
- D1 Careful With That Axe, Eugene (Alternate Take) 6:01
- D2 A Saucerful Of Secrets (Unedited) 12:45
動画プレイリスト
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Pompeii Intro (Live at Pompeii - MCMLXXII - 2025 Mix)
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Echoes - Part 1 (Live at Pompeii - MCMLXXII - 2025 Mix)
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Careful with That Axe, Eugene (Live at Pompeii - MCMLXXII - 2025 Mix)
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A Saucerful of Secrets (Live at Pompeii - MCMLXXII - 2025 Mix)
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One of These Days (Live at Pompeii - MCMLXXII - 2025 Mix)
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Set the Controls for the Heart of the Sun (Live at Pompeii - MCMLXXII - 2025 Mix)
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Mademoiselle Nobs (Live at Pompeii - MCMLXXII - 2025 Mix)
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Echoes - Part 2 (Live at Pompeii - MCMLXXII - 2025 Mix)
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Careful with That Axe, Eugene - Alternate Take (Live at Pompeii - MCMLXXII - 2025 Mix)
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A Saucerful of Secrets - Unedited (Live at Pompeii - MCMLXXII - 2025 Mix)