The Temptations - Sky's The Limit (1971)
The Temptations『Sky's The Limit』
1971年4月、Motown傘下のGordy RecordsからリリースされたThe Temptationsの通算13作目となるスタジオ・アルバム。全曲のプロデュースをサイケデリック・ソウルの開拓者Norman Whitfieldが手掛け、作詞家Barrett Strongとの名コンビによる楽曲を中心に構築された。グループの黄金期を牽引したオリジナル・メンバーのEddie Kendricksが参加した最後のスタジオ・アルバムであり、同じく創設メンバーのPaul Williamsにとっても事実上のラスト・アルバムとなった劇的な転換期の記録である。
制作背景・エピソード
本作の制作期は、グループ内に大きな緊張が走っていた時期にあたる。プロデューサーのNorman Whitfieldが推進する長尺かつ実験的なサイケデリック・ファンク路線(ヴォーカル・グループの歌唱よりもスタジオの音響効果やインストゥルメンタルが主導するスタイル)に対し、伝統的なボーカル・ハーモニーを重んじるEddie Kendricksが強い不満を募らせ、ソロ転向を決意。さらに重い体調不良とアルコール問題を抱えていたPaul Williamsも本作を最後にグループを離脱することとなった。結成以来の「クラシック・ファイブ」の時代が終焉を迎える激動のさなかに生まれた作品である。
サウンドと聴きどころ
Norman Whitfieldによる重厚なサイケデリック・ファンクと、テンプテーションズ本来の真骨頂である甘美なソウル・バラードが鮮烈なコントラストを織りなしている。
本作の白眉は、Billboard Hot 100とR&Bチャートの双方で第1位を獲得した永遠の名曲「Just My Imagination (Running Away with Me)」。Eddie Kendricksの儚く美しいファルセット・リードが孤独な夢想を歌い、Paul Williamsによる「Every night on my knees I pray」の切実な挿入フレーズが深い余韻を残す。この曲はKendricksにとってグループへの至高の別れの手紙となった。
対照的にA面を締めくくる「Smiling Faces Sometimes」は、12分半に及ぶ長尺のサイケデリック・ファンク・ジャム。人間の欺瞞や裏切りをテーマにしたシニカルな歌詞を、ワウワウ・ギターと不穏なストリングス、重厚なビートに乗せて壮大に展開している。本作での完成度の高さからシングル化が予定されていたが、Kendricksの離脱に伴い企画が見送られ、Whitfieldが結成したThe Undisputed Truthに引き継がれて全米大ヒットを記録した逸話を持つ。さらにスワヒリ語で世界の団結を訴える社会派ファンク「Ungena Za Ulimwengu (Unite The World)」、流麗なミディアム「Gonna Keep On Tryin' Till I Win Your Love」、そして9分を超える大作「Love Can Be Anything」に至るまで、ヴォーカル・グループの限界を超えようとする野心的なサウンドが詰め込まれている。
時代の文脈
1971年は、Motownがデトロイトからロサンゼルスへの移転を本格化させ、Marvin Gayeの『What's Going On』に代表されるように、アーティスト主導の社会意識とアルバム志向が急速に開花した歴史的過渡期であった。テンプテーションズもまた、60年代のスウィートなモータウン・ポップスの枠組みから脱皮し、カウンターカルチャーや混迷する米社会の現実を反映したヘヴィな音楽性を確立していった。
後世への影響
KendricksとWilliamsの離脱という最大の危機を乗り越えたテンプテーションズは、Dennis Edwardsを中心に体制を立て直し、1972年の『All Directions』および歴史的グラミー受賞曲「Papa Was a Rollin' Stone」による更なる黄金期へと突入する。本作はその劇的な飛躍の直前に位置し、60年代ヴォーカル・ソウルの究極の完成形(「Just My Imagination」)と、70年代ファンク/ニュー・ソウルの先駆的実験が奇跡的なバランスで結晶した、グループ史上屈指の重要作として今なお愛され続けている。
トラックリスト
- A1 Gonna Keep On Tryin' Till I Win Your Love 3:50
- A2 Just My Imagination (Running Away With Me) 3:39
- A3 I'm The Exception To The Rule 3:20
- A4 Smiling Faces Sometimes 12:35
- B1 Man 2:37
- B2 Throw A Farewell Kiss 3:25
- B3 Ungena Za Ulimwengu (Unite The World) 4:30
- B4 Love Can Be Anything (Can't Nothing Be Love But Love) 9:20
動画プレイリスト
このアーティストについて
The Temptationsは、1960年にアメリカ・ミシガン州デトロイトで結成されたヴォーカル・グループだ。モータウン・レコードを代表する存在として、1960...
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