Genesis - Trespass (1970)
Genesis 1970

Genesis - Trespass (1970)

Rock Prog Rock

Genesis『Trespass』

Genesisの2作目のスタジオ・アルバム『Trespass』は、1970年10月23日にCharismaから発表された作品。初期Genesisの転機にあたる一枚で、オリジナル・ギタリストのAnthony Phillipsが参加した最後の作品、ドラマーのJohn Mayhewが参加した唯一の作品でもある。UK盤のファースト・プレスは、テクスチャード加工の見開きジャケット、ピンクのscroll label、歌詞インナー付き。レーベル表記には「℗ 1970」、インサートには「© 1970」とある。

制作背景と録音の経緯

本作の楽曲の多くは、サリー州Wottonにあるロード・マネージャー、Richard MacPhailの家族所有のコテージ「Christmas Cottage」で作られた。バンドは約半年間そこにこもり、ライヴの合間に集中的に曲作りを進めている。1970年3月にはロンドン・ソーホーのジャズ・クラブ、Ronnie Scott’sでの定期出演がプロデューサーのJohn Anthonyの目に留まり、彼の説得でTony Stratton-Smithが契約を決めた。録音は1970年6月から7月、ロンドンのTrident Studiosで行われ、John Anthonyがプロデュースを担当している。

16トラック録音になったことで、デビュー作よりも細かな制作が可能になったとされる。Anthony Phillipsは、ギター・ソロの多重録音ができたことを大きな前進だったと振り返っている。曲作りの面では、Phillipsによれば当時のGenesisは「BanksとGabrielのキーボード派」と「自分とMikeのギター派」という2つの作曲家集団が対等に並ぶ形だったという。Peter Gabrielは、フォーク寄りの要素がAntとMikeから来たものだと語っている。

「The Knife」の歌詞は、Gabrielがプロテスト・ソングのパロディとして書いたもの。兵士が抗議する人々に発砲する語りの部分は、同じ年の春に起きたKent State大学銃撃事件に触発されたとされる。ジャケットはPaul Whiteheadによるもので、もともとの牧歌的な絵が「The Knife」の追加で作品の雰囲気と合わなくなり、バンドがWhiteheadに本物のナイフでキャンバスを切り裂かせて現在のデザインになった。

当時の位置づけ

『Trespass』は、前作『From Genesis to Revelation』のポップ志向で過剰なプロダクションから離れ、フォーク色の強いプログレッシヴ・ロックへ向かった作品として扱われている。Family、Procol Harum、Fairport Conventionなど1960年代末のサイケデリアやフォーク・ロックの影響が挙げられている。Gabrielのソウル由来の感覚、Banksのクラシックとポップの素養、PhillipsとRutherfordの12弦ギターが重なる形でまとめられている。

収録曲では、「White Mountain」が2本の12弦ギターの絡み、「Looking for Someone」と「The Knife」がヘヴィな曲として挙げられ、「Stagnation」は9分の大作として紹介されている。「Dusk」は静かな曲として触れられている。バンド自身は「The Knife」を、自分たちが見出した“よりダークなエネルギー”の表れと語っている。

この作品の後、Phillipsは舞台恐怖症と健康上の理由を挙げて脱退し、Mayhewもバンドを離れた。その後、GenesisにはPhil CollinsとSteve Hackettが加わっていく。

後世への影響と評価

発売当初の商業的な反響は大きくなかったが、Genesisが自分たちのソングライティングの輪郭をつかんだ重要な作品として扱われている。次作『Nursery Cryme』以降の展開につながる出発点という位置づけもある。ジャケットを手がけたPaul Whiteheadは、その後『Nursery Cryme』(1971年)と『Foxtrot』(1972年)も担当している。

評価面では、Melody Maker誌が本作を「今月のアルバム」に選出した一方、Rolling Stone誌は「むらがあり」「輪郭がはっきりしない」と評した。チャートではベルギーで1位を記録し、1971年1月の初の海外公演がベルギーで行われるきっかけにもなった。英国では、バンドの人気が高まった後の1984年に98位でチャート入りしている。

『Trespass』は、初期Genesisの編成、録音環境、曲作りの流れ、そして「The Knife」を含む楽曲群の成り立ちがまとまって見える一枚。後のメンバー交代の直前に置かれた作品としても、資料が多く残るアルバムになっている。

トラックリスト

  1. A1 Looking For Someone
  2. A2 White Mountain
  3. A3 Visions Of Angels
  4. B1 Stagnation
  5. B2 Dusk
  6. B3 The Knife

動画プレイリスト

公開: 2026年10月

このアーティストについて

Genesis

Genesis

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